第6話 部屋がきれい

「さーて、風呂だ風呂」


なんとか全てを食べきってお腹がパンパンになった僕は風呂に入ることにした。

ちなみに2人が作った料理の味はどれも同じだった。

僕の好きな味付けだからね。


「今日も疲れたもんね〜!」


「早く疲れを流したいところですね」


「ごく自然に入ってこようとしてるよね?」


脱衣所まできたが、勇者のパーティのようにぞろぞろと2人も付いてきていた。

まぁ家に入るまでに予想はできてたけどやっぱりそうか......。


「2人とも僕に裸見られて恥ずかしくないの?」


「むしろ見て!」


「私にとってのご褒美ですが?」


そうだった。

こいつらそういうやつだったよ......。

僕のためなら何でもするとか言ってたし、裸を見られるなんて屁でもないのか。


「ちょっとは恥ずかしがった方が可愛いと思うよ、マジで」


「私の裸を見せるのは歩くんだけなんだからね!......本当はすごく恥ずかしいんだけど......」


「あゆくんになら見られてもいいです......。だめです、顔が熱くなってきました......!」


「ここでドキっする僕も僕だよな......」


取って付けたようなセリフだったとしても美女がこんなセリフを僕のためだけに言ってくれていると思うと嫌でも意識してしまう。


「だが甘いな!僕の家のお風呂は1人用だから狭いんだ!」


「知ってるよ?」


「一般常識ですが?」


「なん......だと!?」


流石ストーカーズ!

風呂の間取りまで完璧に把握しているというわけか。

それに考えればわかることじゃないか!

狭い空間に僕といることなんてこいつらにとってはただのご褒美でしかないと!


「......バスタオル体に巻いてってので勘弁してくれないですか?」


「しょーがにゃいにゃ〜!歩くんと入れるにゃらいいよぉ〜!」


「それも新妻って感じでいいですね......。えへへ」


今のは素の反応なのか?

めちゃくちゃときめいてるんですけど!?

未来は猫みたいに僕に擦り寄ってるし、美月は僕と腕を組み、下を向いて微笑んでいる。

今の僕って完全にハーレム物の主人公じゃないか!

いやむしろ、僕がヒロイン!!!

でも、かなし〜みの〜とはなりたくない。


「でもさぁ......何であばらガリガリの皮女と一緒なの?」


「あゆくんと入るのは嬉しいんですが......この奇乳メタボと一緒なのはいただけませんね」


ガキィィィィィィン!!!

罵倒を口火にまた戦闘が始まる。

本日何度目かは数えるのがめんどくさいのでやめておこう。

2人ともスタイル抜群なのにな。

美月は胸は平均よりは小さいものの、スレンダーで運動系女子って感じだし。

未来も胸が大きいのに対し、くびれは細いし。

正直どちらも完璧なプロポーションだと思うが、お互い相手をどういう目で見てるんだろう?


「あ、今のうちに行けばいいのか」


美女2人と風呂ってのもいいが、流石に僕の理性が持つかわからないので、1人で風呂に入ることにした。




――――――――――――


「はぁぁ!癒された〜!」


湯船にじっくりと浸かり、ポカポカしてきたので立ち上がる。

風呂場のドアを開けると脱衣所ではなおも金属のぶつかり合う音が響いていた。


「おーい、僕は先に風呂に入ったからもう戦う必要なくな......」


「歩くんの残り湯を飲むのは私だぁ!」


「観賞用、保存用、実践用!!!」


戦いは次の段階に進んでいたのか......。

我が家の脱衣所が広くてよかった。

狭かったら絶対そこら中の物が砕けていただろう。

あと、実践用については後で美月に詳しく聞いておこう。


「先に部屋行ってるぞ?」


「早く歩くんエキスを摂取しなきゃ!」


「一刻も早く使いたい!」


朝もあったように、もう僕の声はこいつらには届かないようだ。




――――――――――――


しばらくすると、パジャマを着た2人が僕の部屋に入ってきた。

「ねぇ、その2リットルペットボトルいっぱいあるのって何?」

とは口が裂けても言えなかった。


「おぉ、2人のパジャマ姿初めて見たけど可愛いな!ん?でも奇遇だな、僕もそのパジャマだよ」


2人とも僕が使っているパジャマと同じパジャマを着ていた。

サイズが少し大きいのか、ブカブカしていてそれがまたこの2人の可愛さを引き上げていた。

分かったぞ?

僕とお揃いのパジャマっていうことだな、可愛いやつらめ!


「歩くんのだよ?」


「あゆくんのですよ?」


「......は?」


全然可愛くなかった。

確認のため、自分が着ているパジャマの匂いを嗅ぐと、明らかに新品の匂いがした。

......いや待てよ?

嫌な予感がして、タンスを開け、他の服の匂いも嗅ぐと全てから新しい服の匂いがした。

こいつらまさか全部新品と取り替えたのか!?

そういえば......。


「なぁ、最近思ってたんだけどさ」


「なぁに?」


「なんでしょうか?」


「僕の部屋がすごく綺麗なんだ!君たち何か知らないかい?」


「「あぁ、全部新しいのと取り替え......」」


「わかった!僕が悪かった!もうそれ以上言わなくていいよ!」


最近妙に違和感あると思ったらそういうことか。

布団も枕も筆記用具もスリッパも箸も、何から何まで全部綺麗になったよなぁ、日頃の行いがいいのかなぁ。

とか思っていたあの頃の馬鹿な自分をぶん殴りたい。

......布団と枕?

まさか僕の楽園エロいやつまで!?

ベッドの下に手を突っ込んだら本とDVDの感触があったのでひとまず安堵あんどする。


「まぁ、流石にここまではしないか」


「そうそう、ベッドの下にあったブサイク女の写真集ならズタズタにしてシュレッダーにかけて海に捨てといたよ?」


「趣味の悪い女のDVDなら瓦割りの練習に全て使いましたよ?」


「......ハハッ(僕の精一杯の笑顔)」


「......(未来の射殺す視線)」


「......(美月の何の感情も無い視線)」


ねぇ、何で笑ってくれないの?

さっきまでは笑ってたじゃん!

てことは今僕が触っているものはなんだ?

生き残りかと思って、2人にバレないように引っ張り出す。


『鹿野 未来 『初のヌード写真集!』全監修 鹿野 未来』


『金谷 美月 『生まれたままの私を抱いて!(360分)』全監修 金谷 美月』


ジーザス!!!!!!!!!!!!


「オカズにしてね?♡」


「モニター越しにかけてください♡」


「あ゛り゛か゛と゛う゛!」


涙が止まらないよ......。

......長い間!!!(下が)くそお世話になりました!!!(尾田先生ごめんなさい)


「泣くほど嬉しいの?やった!」


「泣いて喜んでくれるなら作ったかいがありました!」


こいつら......僕の声どころか、気持ちすらも届かなくなったらしい。




――――――――――――


......この本とDVDは家宝にしよう。

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