(Three)

 彼は、ようやく気がついた。

 塔の上で無為に時を過ごしても、何の意味もないことに。

 不老不死を手に入れることの、愚かさに。

 壁の向こうでは、少女が眠りについている。彼女を裏切ることには、少しだけ、心が痛んだ。

 少女は何も覚えていなかった。自分が王女であることも、王国のために犠牲になったことも、ここで時を重ねる意味も。

「ごめんなあ。でも、僕はそろそろ、自分の道に戻らなくちゃ」

 彼は足音を忍ばせて、そっと、塔を下りはじめた。

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