Chapter Eight

「ねえ、君は閉じ込められているのかい?」

「え?」

 お姫さまは目を瞬きました。

「閉じ込められている、ですか?」

「ああ。もう長いこと、ここから出してもらえないのだろう? 君は囚われの身なんじゃないのかい?」

「出してもらえない……」

 お姫さまは口の中で呟きました。その言葉はつまり、お姫さまを塔に入れたものの存在を示しています。

 お姫さまは、今更に気がつきました。お姫さまが、扉のない塔の上で日記を書きつづけているのは、誰かに命じられたからに他ならないと。

 ですが、いったい、誰がそんなことをするのでしょう?

「わたしは、なぜここにいるのでしょうか……」

 ただ生きつづける。ここから出ることも叶わず、塔の中、たった独りで。

 それが自分なのだと、お姫さまはようやく気づきました。

 そしてもう一つ。

 このまま塔の上で過ごしていたら、決して、この人に会うことはできないのです。

 きつく人形を抱きしめます。どんなに退屈な時も浮かばなかった想いが、口をついて出ました。

「ここから、出たい」

 あなたに会うために。



 唱えているだけではどうにもならないと、お姫さまにもわかっていました。

 けれど、お姫さまに何ができるでしょう?


 一度口に出してしまったら、もう、気づかないふりはできません。

 お姫さまは、泣きたいようなもどかしい気持ちで、人形を抱きしめました。

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