Chapter Two
独りぼっちのお姫さまには、何にもすることがありません。
お姫さまがいるのは、円い塔のいちばん上。高い高い石の塔のてっぺんです。お姫さまは、自分がいる部屋より下が、どうなっているのか知りません。
お姫さまがいる部屋は、半円形をしています。床には毛の長い絨毯が敷きつめられ、カーブを描いた壁の真ん中に、大きな石組みの暖炉が造りつけられています。
そして他の部分は、ぐるりと木の本棚が並んでいます。あまりに背が高いので、どこまで続いているのかはよく見えません。お姫さまの手が届かないことだけは確かです。ぎっしりと本が詰め込まれていますが、それでも足りずに、本は、床の上にも積まれています。それらは全て、お姫さまの日記です。
床の上には他に、幾つかクッションが転がっています。お姫さまが眠るときには、それらが役に立つのです。ベッドはありません。家具といえば、装飾を施された衣装箱が一つだけ。その中には、インク壺と羽根ペン、書きかけの日記が入っています。インク壺にはインクがたっぷり入っていて、なくなることはありません。
暖炉には、いつも炎が入っています。隣には大きな薪入れがあって、いつでも薪がたっぷり入っています。使っても使っても、減ることはありません。
出入り口は、ありません。
ただ、塔の中心に当たるであろう、まっすぐな壁の中央には、本棚がなくて、石の壁がむき出しになっていました。石と石の間には、僅かに隙間がありますが、向こう側を覗くことはできません。
お姫さまは、よくそこにもたれかかって、明かり採りから空を見上げていました。
そう、お姫さまは退屈でした。
お姫さまには、何にもすることがないのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます