第二十二話 お祭り実行委員会

 イリオス祭の名物と言えば祭り期間中街内を練り歩くパレードである。

 ダンスや音楽はもちろんのこと、モンスターを模した巨大な張り子が毎年多くの観光客達の目を楽しませている。

 毎年様々なテーマに沿って作られるのだが、今年はイリオスの始まりの伝説を題材にした物を作ることとなり、例年以上の期待が寄せられている。


「と、言うわけで祭り実行委員の皆様に集まってもらったわけですが、どうですかな進捗の方は」


 この老人が現在イリオスの街を治めているデュック・マンソン首長だ。

 祭りの実行委員は鍛冶屋のマチェットや酒場のロゼリアをはじめ、グレイハウンドのマスターヴォルクやルーデンファームからはアンナも参加している。

 その他にも地区ごとの有力者が顔を揃えている。


「北地区代表ヴォルクだが、モンスターの張り子制作は少し遅れてるな。なんせ情報が伝承しかないわけだから大部分想像で補う必要がある」


 北地区の代表ヴォルクは、そのハンターとしての経験から巨大なモンスターの張り子制作を任されている。


「西地区代表マチェットだ。こちらは始祖イリオスの宝剣のレプリカ制作だな。二対あるうちの片方は素材の選定も済んだのだがもう片方が難航している感じだ」


 西地区代表のマチェットは始祖イリオスが伝説のモンスター、フラムマーラを倒した時に用いた剣と、フラムマーラの素材を用いて作ったとされる剣のレプリカを制作を任されている。


「南地区代表ロゼリアよ。パレードの練習はうちの店のソニーのおかげでだいぶ良い感じよ。例年以上に盛り上がること請け合いね」


 南地区代表のロゼリアはパレードの音楽とダンスの担当だ。旅の楽師ソニーが加わったことにより音楽隊のレベルアップが期待されている。


「東地区代表アンナです。出店希望が出された各屋台の出店場所の抽選と、祭り用の飾り付けの手配は今の所順調に進んでいます」


 東地区代表のアンナの担当は露店の配置や、街中に祭りに合わせた装飾を施すことだ。祭り期間中最も慌ただしいのがこの仕事と言われている。


「なるほどなるほど。ではまず張り子制作ですが資料に関してはこちらからも手配しておきましょう。宝剣の素材に関してはその道のプロであるマオ君に力を貸してもらいましょう。旅の楽師ソニー君に関しては私の方でも話しは聞いております。今年の音楽は非常に楽しみですね。さてアンナ君、大変だとは思いますが引き続きよろしくお願いしますよ」


 祭りの進捗状況報告が終わると最後にデュック首長はこう付け加えた。


「例の事件から十年、今年は例年以上の観光客数が予想されます。ゆえに我々の手腕が試させる年でもあります。皆さん大変だとは思いますが、最後まで気を抜かず見事この祭りをやり遂げ、イリオスの復興を全世界に示してみせましょう!」


 首長の言葉が終わると皆から歓声が上がった。

 その日の会議はこうして幕を閉じたのであった。

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