第十七話 ダイン・モルゲン
クレムナ村の人々は突然現れた私達に対して当初は警戒の色を見せていたが、ザックの仲間と知ると一転村をあげて歓迎してくれた。
「おお、ザック。まさか生きて戻るとは思わなかったぞ」
「ザック、あんたこんなに立派になって」
「二人共大袈裟っすよ。あ、皆さん紹介するっす。こちら俺の両親で」
「ダイン・モルゲンです」
「ルシア・モルゲンと申します。いつも息子がお世話になっております」
ザックは両親との再開を喜んでいた。
ザックの父はこの村の村長でありハンターでもある。ゆえにここいら一帯のモンスターについてとても詳しいのだ。
「それでプラントタートルを探してるんすけど、親父なんか知らないっすか?」
「ああ、実はプラントタートルなんだが、最近家畜化に成功してな」
「家畜化っすか?」
「ああ、やつの背中の土壌は非常に肥えてるからな。作物を育てるにはぴったりなんだ。だからここらに生息しているプラントタートルの大半は背中の雑草を刈り取って作物を植えている」
「ってことはバンブータートルは今居ないんすか?」
「いるとすればもっと森の奥の方だろうな。あまりに大きく成長した個体はさすがに手に余るからな。家畜にしてるのは比較的若いものばかりだ」
ダインに案内され着いていくとそこには背中に作物を植えられたプラントタートルの群れがいた。
「こいつらは大人しいし人間よりも長生きだし共存するのにはうってつけだ」
「これでも若い方だなんて。充分大きく見えるのに」
その大きさは例えるなら一軒家、人が上に乗って作業するには充分な足場もある。
「大きいやつになるとちょっとした山でな。もともとこいつらが背中に植物を背負うのは外敵から身を護る為と言われてるが、あそこまで大きくなるとたいていの肉食モンスターじゃ手が出せんよ」
あたりはもう薄暗くなってきていたのでその日は村で一泊させてもらうことにした。
プラントタートルの背で育てられた作物は豊富な栄養によってとても大きく立派に育っており、味もそれはそれは素晴らしい物だった。
「美味しい。イリオスでもこの味が再現出来たらいいのに」
「なんなら子供のプラントタートルを連れてくかい? 作物を育てられる大きさになるには数年かかるが子供のうちから育てれば特大サイズになってもちゃんと慣れてくれるるだろう」
「餌は何を食べるんですか?」
「雑食性だからなんでも食べるぞ」
「それは良い情報ですね。どこか飼える場所あったかしら」
話しを聞いていたヴォルクは何かを思いついたらしく、一つの提案をしてきた。
「イリオスにはモンスター牧場がある。知ってるか?」
「あ、はい。それならうちにも定期的に素材を卸してます」
「そこならもしかしたら飼育に興味を持つかもしれないな。家畜化出来そうなモンスターの情報は常に集めているようなところだし」
「なるほど確かにそこなら良さそうですね」
話し合いの結果プラントタートルの幼体を数匹程譲ってもらえることになった。
モンスター牧場へはヴォルクが飛空艇を使って届けてくれるそうだ。
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