第十四話 飛空艇アルバトロス号

 ヴォルクの招集によってグレイハウンドのメンバーが集められた。


「いいかお前たち、これから俺たちはザックの故郷クレムナへと向かう! 初航行だ、気合入れてけ!」

「「「おー!」」」

「えっと初航行ってどういう……」

「嬢ちゃん、この前兄の方に見せるって約束した物覚えてるよな? それがこれ、飛空艇アルバトロス号だ!」


 ヴォルクの案内で来た場所は格納庫であり、そしてそこに堂々たる佇まいで鎮座していたのは巨大な飛空艇だった。


「す、凄い! こんなの見たことない!」

「私も旅先で色々な物を見てきましたがこんな物は初めてです」

「今の世の中こんな物持ってるのは貴族くらいだろう。だが造船技術が上がり量産されるようになれば、いずれこの世界の空は飛空艇で埋め尽くされるだろうさ」


 飛空艇を見つめるヴォルクの目はまるで少年のように輝いていて見えた。


「さあ野郎共、荷物を積み込め!」

「あ、あのヴォルクさん今回の旅の費用って……」

「ん? ああ、気にするな。言っただろ試運転だって。嬢ちゃん達はたまたまその試運転に同乗しているだけさ」

「あ、ありがとうございます! あの、私達に出来ることならなんでもお手伝いしますので、雑用でもなんでも言って下さい!」

「そうです! 私もドラゴンスケイルで更に磨いた料理の腕もいつでも披露しましょう!」

「そりゃ楽しみだ! じゃあせっかくだし、ソニーとか言ったか? そっちの兄ちゃんと嬢ちゃんには厨房を任せるとしよう」


 こうして、笛の材料を求める旅が始まった。

 飛空艇の速度は馬車とは比べ物にならない程早く、さらに森等の障害物も関係なく進む。

 何より驚くべきは甲板から見える素晴らしい景色だった。


「この飛空艇も色んなモンスターの素材を使って作られてるんすよ」

「凄い、イリオスの街がもうあんな遠くに……」

「うっかりして甲板から落ちないで下さいっすよ?」

「ザックさん、私なら大丈夫です。でもちょっと感動したかも」

「技術は日々進歩するっす。この飛空艇には武器も積んであるんで将来的には飛んでるドラゴンとかも捕まえられるようになるはずっす」

「今まで行けなかったような所にも行けるようになるんですね」

「その通りっす。今はまだ未開拓な土地が多いっすけど、飛行技術や航海技術が進歩すれば人はどこまででも行けるっす」


 いつかこの景色を兄さんにも見せてあげたい。

 きっと兄さんの事だから大はしゃぎするに違いない、瞬く間に小さくなってゆくイリオスの街を見ながら私はそんなことを考えていた。

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