第十二話 ヴォルク・ハスター

 後日私は兄さんにソニーの話しをした。

 兄さんは私の話しを聞いているうちに彼に興味を持ったようだった。


「それでね、彼は今ドラゴンスケイルで働いているのよ」

「へえ、それなら少し様子を見に行ってみるか?」

「そうね。私もどうしてるか気になるし」


 仕事を終えると二人でドラゴンスケイルへと向かった。

 店内はいつも通り活気に満ち溢れており、忙しそうに働くソニーの姿も見て取れた。


「いらっしゃいませ、ご来店ありがとうございます」

「頑張ってるみたいねソニー。でも酒場でそれは少し堅苦しくない?」

「そうなのよね。もっと言ってあげてマコちゃん」

「ロゼリアさん。彼の働きぶりはどうですか?」

「よく働いてくれてるわよ。それに料理への熱意も本物ね。他所の地域で食べた美味しい料理を新メニューとしていくつか再現してくれたわ。中でも一押しはこの石窯ピザね。新しい物好きのハンター達に大人気よ」


 私とロゼリアが話している間、初対面だった兄さんとソニーは互いに挨拶をしていた。


「初めまして、マコの兄のマオ・キャンベルです。よろしく」

「マコ様のお兄様でしたか。マコ様には色々とお世話になりまして、本当に感謝してもしきれませんです、はい!」

「それは何よりです。イリオスでの生活には慣れましたか?」

「ええ、ここはとても良い街ですね。力強く生きる人々を見ているだけでこちらもパワーを貰えるような気がします」


 などと談笑をしている間にも他の客達から注文が入り、ソニーとロゼリアは仕事へと戻っていった。

 そんな時、一人のハンターが横から声を掛けてきた。


「よう素材屋、景気はどうだい?」

「ヴォルクさん! お陰様で景気はとても良いですよ」

「そりゃ何よりだ。それで、そちらのお嬢さんは?」

「妹のマコです」

「マコ・キャンベルです。兄から話しは聞いてます」

「おお、妹さんだったか。それじゃちゃんと挨拶しねえとな。ハンターギルドグレイハウンドのマスター、ヴォルク・ハスターだ。よろしくな」


 周りを見るとヴォルク以外にもグレイハウンドのメンバー達が集まって宴を催しているようだった。


「実はな、この前儲けた金であるでかい買い物をしたんだ。我がギルドが長年目標にして資金集めをしていた物でな。そうだ、せっかくだから今度見に来ないかお二人さん」

「一体どんな物を買ったんですか?」

「ははは! それは見てからのお楽しみだ。だがきっとあれを見れば驚くだろうなあ」


 悪戯っぽい笑みを浮かべるヴォルク、彼は一体何を買ったのだろうか。

 私は兄さんの方を見たが兄さんにも心当たりはないようだった。


「今日はその祝賀会よ! あんたらもこっちに混じって一緒に飲むといい。この前の礼も兼ねて今日は俺の奢りだ!」


 そう言うとヴォルクは、私達二人の分の追加の料理と飲み物を注文してくれた。

 私達もまた勧められるがまま宴の輪に加わったのだった。

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