第九話 後日談

 こうしてイリオスに戻った俺は早速グレイハウンドのマスターヴォルクに会いに行った。


「商談は上手くいったようだな」

「ええ、万事滞りなく進みましたよ。金貨にして二千枚、おまけに今後も仕入れたモンスタージェム等を買い取ってくれるそうです」

「貴族相手に上手くパイプを作ったじゃねえか。それにあの宝石が金貨二千とは……決めたぜマオっ! 今後ああいう素材を手に入れたらお前のとこに全て流してやる! 所謂専属契約ってやつだ」

「本当ですか! ありがとうございます”」


 俺とヴォルクは固い握手を交わした。


「それで取り分なのですが、仲介料として金貨百枚程でどうでしょう」

「おいおいそんな少なくていいのか?」

「旅の経費は全て依頼人が持ってくれましたので、それくらいが妥当かなと」

「今後も仲良くやってくんだ。遠慮は要らん。そうだな、売り上げの二割ってとこでどうだ」

「ではお言葉に甘えて、その代りもし素材がご入用の際はお安く致しますよ」

「ああ、よろしく頼むぜ」


 今回の商談の成功は次に繋がる成功だ。

 貴族との繋がり、ハンターギルドとの繋がり、それらは金貨の枚数では測れない程の価値がある。

 家に戻るとマコが出迎えてくれた。


「その様子だと上手くいったみたいね」

「ああ何もかも順調だ。そっちは大丈夫だったか?」

「ええ、いつも通り忙しいけれど平和な日常だったわ」

「それは何よりだ。そうだ、今日の仕事が終わったらまたドラゴンスケイルに飲みにいくか」

「良いけど、酔いつぶれないでね?」


 後日マチェットの元にも褒美が届いたらしい。

 あまりの金額に目を回したと笑いながら話してくれた。

 かくして、黒き風ブラヴェントゥスを巡る物語はこれにて幕を閉じた。

 

 そして、新たなる物語が始まる。

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