第七話 デュランブレードアーマー

 デュランブレードアーマー、マチェットがそう名付けた防具はまさに見事な一品だった。


「デュランはもちろんデュラン鉱石から、そしてブレードはブラヴェントゥスの刃のように鋭い棘からそう名付けました」

「ただのブレードアーマーでも良い気がしますけどね」


 俺のその言葉に少しムッとした様子のマチェットだったが、すぐに気を取り直して防具の説明を続けた。


「ブラヴェントゥスというモンスターの特徴はやはりその鋭い棘にある。ポールドロン(肩甲)からリアブレイス(上腕当)に付けた棘はモンスターの爪や牙から装着者の身を守ってくれるでしょう。胴体部分はスケイルアーマーのようにデュラン鉱石で補強した鱗を何重にも重ねることで柔軟性と高い耐久性を実現しております!」

「これを装着する時はどうするんですか? 手を怪我しそうですが」


 サミュエルの疑問は至極当然と言えた。

 しかしマチェットはその質問は予測済みとばかりに笑みを浮かべていた。


「装着を補助する者はこの手の内側にブラヴェントゥスの鱗を縫い付けた専用のグローブを使うのです。これならば鋭い刃の部分に触れても切れることは一切ない」

「なるほど、確かにこれならば怪我の心配はなさそうですね」


 サミュエルはすっかり感心しているようだった。

 

「サバトン(鉄靴)とグリーヴ(脛当て)も同様にデュラン鉱石とブラヴェントゥスの鱗で作り上げております。ガントレット(篭手)はブラヴェントゥスの皮の上からデュラン鉱石のプレートを被せたのですが、手の甲の側には棘を付けたので攻守一体の防具となっております」

「これだけ棘で守られていれば迂闊に攻撃したモンスターは手痛い反撃をくらうのでしょうね」

「その通りですサミュエル殿。だがこれで終わりではありませんぞ!」


 そう言うとマチェットはおもむろにもう一つのケースを取り出した。


「実はこの防具とは別に取り外し自在な装具を作ったのです。それがこれ、ブラヴェントゥスの背部の棘をふんだんに使ったその名もブレードマント!」


 ブレードマントと言う名前の通り、それはまるで剣山のように無数の棘が生えたマントだった。


「弱いモンスターであればこのマントに手出しも出来んでしょう。まあ重さが増すので常に装着する必要はありませんがこの装具が役に立つ時がきっとあるはず!」

「これは趣味で作ってません?」

「ははは、まあそう言うなマオ。常に新しい発想を求めるのが職人というものだ」

「ええ、その通りです。マチェット様、あなたに依頼したのは正解でした」


 サミュエルの言葉にマチェットも満足そうだった。

 となれば話題は肝心の報酬の話しへと移る。


「それでサミュエル殿、代金の話しなのですが……」

「そうでしたね。これだけの装備です。材料費も相当かかったのでしょうね?」

「それについてはこちらのマオから話した方が良いでしょう」


 そう言ってマチェットはこちらに目配せをしてきた。

 いよいよ素材屋としての商談の腕が試させるのである。

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