第五話 美しき街ラヴェンツァ

 夜になるとあたりは暗闇に包まれ、月明りのみで進むことは困難であった。

 その日は野宿をすることになり、ハンター達が交代で見張りについてくれることになった。

 幸いなことに幌馬車の中であれば冷たい夜風に悩まされる心配はなく、周囲にモンスター達の気配もなかった為、何事もなく翌朝を迎えることが出来た。


「あとどれくらいで着きそうですか?」

「順調に進んでいるので今日の夕方には目的地に着くでしょうね」


 その言葉通りその日の夕方には目的地である都市、ラヴェンツァへと到着した。

 到着早々まず驚かされたのはその町並みの美しさである。

 統一感のある建物の外壁は白を基調としており、屋根は赤みがかったオレンジ色、そしてその街と並ぶ広大な湖も見事に調和している。

 道はきちんと石畳で舗装されており、街の中心部の広場にある巨大な噴水が観光客を楽しませていた。


「良い街だ。いつかこんな場所に住んでみたいもんだな」

「ええ、マコにも見せてあげたかった」

「あれを見て下さい。あそこが今夜泊まる宿です」

「おいおい随分高そうな所だが大丈夫なのか?」

「既に手配は済ませてありますので、宿代の心配は無用ですよ」


 そのままその日は案内された宿に一泊し、翌日依頼人と会うことになった。

 その宿もまた依頼人が手配したと言うのだが、普段であればまず泊まれないような高級宿ときている。

 さすがに金に糸目は付けないと言うだけのことはある、というよりどれほどの大物を相手にしなければならないのかと内心では動揺していた。


「今からびくびくしても仕方がないな……。今はこの旅を楽しもう」


 その日の夜、用意された食事は湖で取れた魚を中心とした物だった。

 ここらでは貴重な塩をふんだんに使った塩釜焼き、彩り豊かな麺料理、そして高級なワインに舌鼓をうった。

 食後ベランダから見える夜景は雲ひとつ無い美しい星空と、一際大きく輝く月、そしてそれを穏やかに映し出す湖の姿だった。


「マコは今どうしてるだろうか。何事もなければ良いのだが……」


 この仕事が終わったら何かお土産でも買ってあげよう、そんなことを考えながらフカフカのベッドに横たわり旅の疲れを癒した。

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