止まらない波⑭

「そうです。吾妻元少佐配下の元反乱軍情報部のメンバーは、皆〝世界均衡派〟に鞍替えしたのだと考えられます。そして、羽間様のかつての同僚であることを利用して、まんまとこの集落の中枢に潜り込んでしまったのです」

 分かる話である。この集落は〝世界均衡派〟にとって大いに邪魔な存在である。ましてや、この集落の首長的存在が、かのヴェルデムンドの背骨折りであれば尚更のことである。

「で、でも。でもさ……」

 しかし、そこで小紋にある一つの疑念が湧く。彼女自身は――小紋の警護役でもあるアリナ・インシュラント自身の身の上が気になってしまう。

 しかし、そこはアリナも当然の如く察するところであり、

「あなた様が危ぶまれるのも当然の事で御座います。しかし、これならばご信用頂けるかと……」

 言ってアリナたちは、まるで口裏を合わせていたかのようにいきなり服を脱ぎ出した。一糸まとわぬ肢体をさらけ出した彼女たちは、秘めた部分すら隠す様子もなく、身の潔白を証明させた。

「これでお分かりになって頂きたく存じます。いかに同じ女性の前とはあれど、ここまで全てをさらけ出すのはとても恥ずかしゅう御座います」

 小紋は唖然とした。唖然としながらも、彼女らの鍛え抜かれた露出された肌に、一つの継ぎ目がないことを確認していた。

「そうだね。どんなに技術が進んでいても、機械に換装した部分だけは誤魔化せないもんね。ごめんね。早く、早く服を着て下さい」

 小紋は深々とお辞儀をする。

「いえ、こちらこそ大変粗末なものを曝け出してしまって……。本当に御無礼のほどお許しください」

 彼女らは、一様にまとっていた下着と服を着直すと、

「わたくしどもも、出自は吾妻元少佐と同じ反乱軍上がりの兵士です。ですが、わたくしどもは、互いの信頼こそが土台にあるべきだと、そう上官に教わって来た経緯と経験が御座います」

 アリナ・インシュラントら、ここに集った小紋の警護役は、裏切った吾妻元少佐と同じ元反乱軍にして、正太郎と面識がある人物である。正太郎とて、そういった土台となる評価が無ければ、自分の伴侶の警護役を任すはずがない。

「しかし、あの吾妻元少佐なる者とその部下たちは、背骨折りさまとの面識を利用して近づいてきたのだと考えられます」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る