完全なる均衡⑮
「その男ってよ。かなり前に、この俺とやり合ったって話だろ? 確か……」
「うん、そう。確かね、第十五寄留ブラフマデージャの崩壊の時だって話してた」
「なるほど。ブラフマデージャの崩壊の時ねえ……」
正太郎は、あの悲しい出来事とを思い返していた。気心が通じ合うことが出来た唯一無二の彼女――アイシャ・アルサンダールを犠牲にしてしまった悲しい出来事を。
「正太郎さん、どうしたの?」
「え、い、いや……何でもねえ。て言うか、あの時の黄金の円月輪との戦闘はかなり厳しかったってな。そんなことをつい思い出しちまって……」
「ふうん……」
「なんだよ?」
「ううん……なんでもないよ」
女の勘は鋭い。特に、かの黄金の円月輪に認められた〝三心映操の法術〟使いの存在ともなると、妙に心の中まで読まれているような気がしてしまう。
「え、ええと……お二方とも宜しいかな? 間に水を差すようで心苦しいが、拙が考えるに、その黄金の円月輪に所属していたデュバラなる男を探すという手も考えられると思うて」
「そうだな。それもありだとは思うが、吾妻さんよう。いかんせんこの世界には、まだ世界地図なんて大それた物すら出来てねえとくらあ。それじゃ、おいそれとそいつを探り当てるなんて出来やしねえぜ?」
言われて、吾妻元少佐は少しの間、宙を仰ぎ見たまま腕組みをして動かなかった。すると、何を思い立ったのか急に眼を見開いて、
「あります、ありますぞ! そのような逸材を拾い上げる方法が!!」
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