虹色の細胞㊲

わしの……いや、儂らの宿願は、我ら第六世代人類の未来永劫の存続なのじゃ。これは、かつてこの地球に存在した人類にはなし得なかった偉業中の偉業なのじゃ。だからこそ、わしはこれだけの非道を行ってでも、この計画を実行し続けたのじゃ。この命尽きて、別の肉体に人格を何度も乗り継いできてでも……じゃ」

「そして、かの羽間君が、ゲオルグ博士……いや、そのご本体である鈴木源太郎博士の心を有していてさえくれれば、ここまで我らの母なる大地を混乱に陥れなくとも澄んだものを……」

「否、それは口にするでない、大膳殿。これも一つの運命さだめじゃ。奴が、この儂の心を宿したところとて、あのような奴じゃ。もしやもすれば、この根底から儂の存在すらくつがえし兼ねなかったかもしれんのじゃからな」

「ええ……。彼は、生まれながらにしての〝破壊神〟ですゆえ」

 言って彼らは、モニターに映る世界に目を向けた。

 ただ、ひたすら平坦な地平には風の音がしない。それだけに、いたずらに蝶が舞ったことで、ひどく醜い大戦争も起こることもない。

 その向こう側にわずかながらに見える〝勿忘草わすれなぐさ〟の大森林を残して……。


 ※※※

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