見えない扉㊶


 何ということであろうか。

 カレンバナは、自らが鳴子沢小紋であるという証明をして見せろというのである。

「カレンバナさん! 僕は本当に鳴子沢小紋だよ! あの地球の、僕の故郷の日本の、あなたと山梨の山中で何度も命を預け合った仲の鳴子沢小紋なんだよ!!」

 言うが、

「それは分かります。ですが、五次元人という輩は、その人物の記憶までもそっくり写し成り代わることが可能だと聞き及んでおります。なので、鳴子沢さま。ここは心苦しい限りなのですが、そのままお引き取りになって下さいまし……。身共とて、本当は……」

 言って、カレンバナは美しく舞う水鳥のように宙へと飛び立った。彼女の幻影は巨木の枝葉を伝い、森の奥へ奥へと小さく消えて行く。

「そ、そんな……」

 小紋は、愕然と大地に膝を落とした。

 まさか、このような事態になろうとは思わなんだ。

 確かにカレンバナの言う通りである。

 小紋も、看護アンドロイドのフェフェリに忠告されていた。

「五次元人の存在は、聖都市〝サンクチュアラ〟にとって脅威なのです。よって、五次元人と手を組み、それに惑わされた者は即刻この試験の不合格となるのです」

 こうも言われれば、互いに五次元人であるか否かを確認出来ぬまでは交流は不可能である。

 そして、相手が五次元人であるか否かの確証を得るためには、

「相手を切り裂き、その中身が虹色の肌をしているか、そうでないかだけで判断するのです」

 とのことである。つまりは、

「相手にかなりの重傷を負わせないと分からないってことだよね……」

 

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