見えない扉㉛


 むせ返るまでの。その光景はまさしく、ヴェルデムンド世界の外地以外の何ものでもない。

(そうだ。僕はこの中で羽間さんと特訓を繰り返したんだ。僕はまだ羽間さんが死んじゃったなんて信じてないけど、羽間さんはいつでも僕の中に生きてるよ……)

 無論、適性試験は受験者の素行を判断するだけではない。当然、その戦闘力や適応力。そして五次元人であるかそうでないかなどの判断も、大型人工知能〝イーリス〟によって行われるのだ。

「じゃあ、言って来るね、フェフェリさん」 

 小紋が扉の向こう側に一歩踏み出そうとすると、

「お待ちになって下さい」

 と、フェフェリが改まって呼び止めてきた。

「なあに? まだ何かあるの?」

「ええ。ここで適性試験の概要をざっくりお話します」

「そう、それで?」

「適性試験は、この外地を通り抜けて、中心部エルドラッドにたどり着くまでに判断されます」

「うん、それはさっき聞いた。それで、まだ何かあるの?」

「はい。さほど難しいルールなどは御座いませんが、他にも同時期に適性試験を受験されている方々が多数存在します」

「そうなんだ。それで?」

「はい。それで、この適性試験では、その方々との協力体制を取って頂いても一向に構いません」

「ふうん」

「ですが、もし、その協力者が途中で〝五次元人〟であると判断された場合は、受験者様がたとえ〝適性〟であったとしても、不合格とさせていただきます」

「ええっ!? それどういうこと?」

「五次元人はとても狡猾こうかつな存在です。それは大型人工知能〝イーリス〟も心得ております。つまり、どんなに受験者様が適性人物であったとしても、協力者が五次元人である場合はそれも例外でないということです」

「ふうん、なるほど。言うなれば、そういうアマちゃんも適性外だって言いたいんだね?」


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