見えない扉㉚


「宜しいですか? この適性試験は、ここサンクチュアラの最深部に備えられた大型人工知能〝イーリス〟が、適正と判断するまで続けられます。それまでは」

「それまでは?」

「それまでは、あなたはこのサンクチュアラの適応を認められません。途中であなたがこの試験を拒否されれば、そこで〝イーリス〟はあなたを不適応と判断します」

「ということは、そこで適性試験は終了と言うことだね?」

「ええ」

 小紋は、渡された着替えに袖を通した。それは、爆発に巻き込まれる前まで身にまとっていた彼女自身の迷彩服である。

(やっぱり、少し衰えたっぽいなあ……)

 元々、それほど筋肉質ではないものの、しなやかな隆線を描いていた二の腕の辺りや腰回りに、わずかな空間が感じられる。

 病室からエリルとフェフェリに手取り足取り館内を案内されるうちに、

(そうか。ここは本当に地球じゃないんだ……)

 と感じた。

 見れば、あちこちに監視カメラのようなものが散見される。ような、というのは、それを監視カメラだと明確に確認出来るような形ではないからだ。ただ、通路やあらゆる施設の所々に、一定の間隔を経てそのようなものが設置されている。

(ここは言われた通りにするのが無難かな。まだ、僕は何も分かっちゃいないんだ)

 お付きの看護師、フェフェリの案内で通された扉の向こうには、懐かしい匂いが漂っている。

「さあ、この先はヴェルデムンドの外地です。当然、サンクチュアラの領域とはなりますが、適性試験を受けられる方々には、ここを通って頂いて、サンクチュアラのの中心部であるエルドラッドにまで辿り着いてもらいます」

「ということは、ここからが本試験と言うことで良いんだね?」

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