見えない扉㉚
「宜しいですか? この適性試験は、ここサンクチュアラの最深部に備えられた大型人工知能〝イーリス〟が、適正と判断するまで続けられます。それまでは」
「それまでは?」
「それまでは、あなたはこのサンクチュアラの適応を認められません。途中であなたがこの試験を拒否されれば、そこで〝イーリス〟はあなたを不適応と判断します」
「ということは、そこで適性試験は終了と言うことだね?」
「ええ」
小紋は、渡された着替えに袖を通した。それは、爆発に巻き込まれる前まで身にまとっていた彼女自身の迷彩服である。
(やっぱり、少し衰えたっぽいなあ……)
元々、それほど筋肉質ではないものの、しなやかな隆線を描いていた二の腕の辺りや腰回りに、わずかな空間が感じられる。
病室からエリルとフェフェリに手取り足取り館内を案内されるうちに、
(そうか。ここは本当に地球じゃないんだ……)
と感じた。
見れば、あちこちに監視カメラのようなものが散見される。ような、というのは、それを監視カメラだと明確に確認出来るような形ではないからだ。ただ、通路やあらゆる施設の所々に、一定の間隔を経てそのようなものが設置されている。
(ここは言われた通りにするのが無難かな。まだ、僕は何も分かっちゃいないんだ)
お付きの看護師、フェフェリの案内で通された扉の向こうには、懐かしい匂いが漂っている。
「さあ、この先はヴェルデムンドの外地です。当然、サンクチュアラの領域とはなりますが、適性試験を受けられる方々には、ここを通って頂いて、サンクチュアラのの中心部であるエルドラッドにまで辿り着いてもらいます」
「ということは、ここからが本試験と言うことで良いんだね?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます