見えない扉㉓


 小紋が再び目を覚ました時、そこには二人の看護師らしき姿と、一人の桃色のプロテクトスーツを身にまとった姿があった。

 それはどれも女性のなりをしていてとても美しく、背丈も容姿も一様に煌びやかである。

「お目覚めになられました?」

 看護師の一人が声を掛けて来ると、彼女らは一様ににっこりと微笑んでベッドの上の小紋を取り巻いた。

「あ、あの……」

 小紋が不安そうに問い掛けると、

「ご安心なさってください。ここには、あなた様に敵対する勢力は誰一人存在致しません。全ては女王マリダ様の手厚い御配慮があってのことです」

 桃色のプロテクトスーツの女性は、落ち着き払った声で彼女の問いに答えた。全ては、予測の範疇はんちゅうにある。

「ここは……どこなのですか?」

 小紋は率直に問うた。すべてが疑問符に満ちていたからだ。

「はい。ここは、女王マリダ様がお造りになられた聖地です。【サンクチュアラ】と申します」

「サンクチュアラ……?」

「はい。ここサンクチュアラは、ヴェルデムンド世界の大半の実権を収める鬼道シュンマッハですら手の届かない、元あった第十五寄留〝ブラフマデージャ跡地〟の先に建設された最新の寄留地なのです」

「最新の寄留地? じゃ、じゃあここは……!?」

「その通りです。ここは地球ではありません。あなた様が以前にお住まいになられていたヴェルデムンド世界なのですよ」



 

 

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