見えない扉④


 しかし、三人には問題が山積みである。

 あの見えない敵は、どこに行ったのであろうか? 

 そしてこの先、使い古しのフェイズファイター奪取し、この第807自治区を無事脱出出来たとしても、それを運用するだけの技術も資材のあてもないのである。

「とにかく今は、ここを脱出することだけを考えよう。ねえ、お二人さん?」

 小紋の何とも言えない含みの入った言い様に、

「そうですわね、鳴子沢さま。ここは深く考えても仕方ありません」

「ですが、これ以上、身共らの負担を鳴子沢さまにおかけするわけにはいきませんし、頂いておくものだけは頂いておきませんと」

 いうや、シグレバナはちゃっかりと電力保持装置の山を自らのフェイズファイターのトランクにしまい込んだ。

「やりますわね、シグレバナ。さすがは諜報機関の元エース」

「そう言うカレンバナだって、あなたらしいことしてますでしょ?」

 言うや、シグレバナの指さす方向には、トランク一杯に詰まったあらゆる弾丸の山が見え隠れしている。

「うーん。確かにこれはすごいね。ここまで機関銃の弾があれば、相手がフェイズファイター一個小隊だったとしても、お釣りがくるぐらいだよ」

 フェイズファイターとは、人型兵器のフェイズウォーカーが変形して空中を自在に飛び回れるように設計された局地型戦闘マシンである。

 元より、ヴェルデムンド世界で開発進化を経て来たフェイズウォーカーであるが、かの世界では大木やつる植物の影響もあり、空中戦という概念は排除されて来た。

 だが、このフェイズウォーカー技術が地球に逆輸入されたとき、新たなる技術進化が加えられた。それが、空中機動兵器となったフェイズファイターである。

「格納庫前の扉を爆破して、一気に外へ脱出しましょう、鳴子沢さま」

「番兵たちの侵入を許す前に、さあ早く!!」


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