見えない扉⑤


 しかし、その時である――

(小紋さん……。早く逃げて……。早く……)

 フェイズファイターに乗り込み、計器類のチェックをしていたそばから、小紋の脳裏に直接呼びかけて来る声があった。

「えっ……!? クリスさん!? また、クリスさんの声が……」

 小紋は周囲に目をくれた。この声は、どこから来るものなのか。どこからクリスティーナは呼びかけて来るのか。

(小紋さん……。さあ、早く……。扉の向こう側へ……)

 聞こえたそばから、格納庫へ沢山の番兵たちが入り込んで来る。

 番兵たちは、小紋たちの乗り込んだフェイズファイターに向かって機銃を乱射する。

「早く脱出しないと!!」

「そうですわね。しかし……」

「まだ、格納庫壁の扉が開き切っておりませんわ!」

 分厚くもうけられた格納庫壁の扉は、人のまぶたのように急に開いたり閉じたりはしてくれぬ。いかに戦闘マシンのフェイズファイターと言えども、このままでは番兵たちの放つ機銃の弾丸によってハチの巣にされてしまう。

「なら、こうするしかないよ!」

 小紋は武器ロック解除ボタンに手をやった。

「何をするので」

「ございますか!?」

「まさか……」

「このような場所で」

「そんなことをされましたら」

「おやめくださいまし、鳴子沢さま!!」

 小紋は、彼女たちの危惧をよそに標準を前方にある隔壁扉に当て、

「発射!!」

 ファイヤボタンを押した。



 

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