全世界接近戦㉜


 戦力的な拮抗を見せる両勢力だが、そこに決定的な結末の道筋は見えなかった。 

 両勢力とも、元はと言えば軍事的組織の集まりでもなければ、国家的なアイデンティティーを示す確たるものを持ち得ていない。つまりは、今や二大勢力となった両者とも、それぞれが身勝手な解釈で事を運営している集団であったからだ。

「所詮はやはり、小悪党どうしの鍔迫つばぜり合いだったというわけですな、鳴子沢どの」

 洞窟の奥のアジトに戻ったリゲルデは、世界の動向が一望できるモニターに向かって苦笑した。

「まあ、ここまでは我々の計略通りですよ、ワイズマン殿。これでかつての栄華を誇った我々人類に進化の兆しが見えてくれば、第六世代たる人類〝ホモサピエンス・サピエンス・ヴェルデムンダール〟に取って代わらずとも滅びの道を歩むことはない」

「そのためには、どんな汚名を被ってでも、この悪行を成し遂げると?」

「その通りですよ、ワイズマン殿。我々、第五世代人類はもう、行きつくところまで行きついてしまったのです。元々、我々第五世代人類に備わった欠点は、精神が成熟する前に寿命を迎えてしまうところにある。だからこそ、自らの利益しか考えぬ小悪党ばかりがもてはやされる環境が構築されてしまったのだ」

「ふむ。それについては俺も耳が痛いな……。しかし、こうやって蟻の観察が出来るようになって、その考えも一蹴されたわけだが」

「私たちは、自分が地球人類であるというカテゴリーを捨てた時、本当に我々地球人類のことを愛おしい存在と思えるようになった。だからだよ、私がここに集めたメンバーが、もうただの人間ではない理由は」

 

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