全世界接近戦㉚


 スミルノフが推し進める誘導兵器の流用は、効果が顕著だった。

 あの凶獣とまで呼ばれたヴェロンに対し、今までの地球上の誘導兵器ではあまりにも太刀打ちできるものではなかった。

 通常のロケットランチャーやバズーカ砲の類いは、それ相当に訓練を受けていなければそう簡単に命中させることが出来ない。

 まして、島崎宗孝らネイチャー過激派組織〝ネオ・ネイティ〟が操る凶獣の飛行テクニックは、かのヴェルデムンド世界を飛び回っていた頃の比ではない。

 つまり、過激派が操る凶獣とは、火気を使用しない空飛ぶ機動兵器であり、これぞ前代未聞の生物兵器なのだ。

 そんな兵器相手に、狙いをつけたとしても、よほどの感覚センス技術テクニックが備わっていなければ撃ち落とすことなど不可能。いくら機械に肉体を換装したミックスと言えども、編隊を組んで押し切られれば、容易に自治区内に侵入を許してしまうのである。

 もし、一体でも凶獣に侵入を許したら最後。そこに大穴を開けられ、彼らはミサイルのような勢いで前線基地を破壊し、瞬く間に核融合炉目掛けて突き進んで来るのである。

「ヴェロンには新兵器のHK-0208簡易誘導ミサイルランチャーで挑め!! そして、貴様ら得意の肉弾戦でとどめを刺すんだ!!」 

 彼ら、新型の機械の身体を手に入れた自治区のミックスたちは、みなが接近戦仕様となっている。両腕には振動型のセイバーソードが仕込まれ、背中には二十五口径の機銃が二門装備されており、連続で二百発ずつ掃射出来るようになっている。

 だが、それだけの装備ではヴェロンを倒すことは出来ない。もし、その程度の装備でヴェロンを倒せるのだとしたら、それこそ伝説の兵士である羽間正太郎に弟子入りする覚悟が必要だからだ。

「科学の力は万能なのだ! 今や、あの世界で栄華を誇ったヴェロンなど、このHK-0208簡易誘導ミサイルランチャーが、努力や根性などと言った古臭い概念までも一掃してくれる!!」



  

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