全世界接近戦㉙
それまで生まれてこの方、発言権などを持つことがなかった彼らである。
その彼らが、身体的な優位性を持ち、そしてその力を誇示することが出来るようになったことで、この世界の情勢は一変してしまったのだ。
決して彼らが悪いわけではない。そして、これまでの世の中の構造が良かったわけではない。
だが、こういった力学的が逆位相の関係性が成立すると、それまで世界に見えていなかった隔たりが取り払われることになる。
「そういうことなのですよ、島崎さん」
シルクハットの大男は言った。「この世には、もう大悪党は存在しません。皆が、あなたのように自分の欲求を満たすためだけの小悪党だらけになり下がってしまったのですよ」
シルクハットの大男は、島崎宗孝が管理する凶獣牧場の扉を出るや否や、ひどく辛辣な悪態をついた。そして、
「だが、少し前のこの俺もそうだった。あの鳴子沢大膳殿に出会う前まではな……」
言って、大男はその場に帽子を払い捨てた。
なんと、その大男の正体は、かの女王マリダ打倒に執念を燃やしていたリゲルデ・ワイズマン中佐だったのである。
「この俺も変わったものだ。こうやって、自分以外の野望に加担するようになったのだからな。だが、なぜか今の俺は充実している。同じ悪行に手を染めているにもかかわらずにな。そうだろ、アマンダ……アマンダ・シャルロッテ?」
リゲルデは、にこやかに宙に言葉を吐いた。
そこにもう、かつての美貌を誇ったアンドロイドの姿はない。だが彼の胸の奥には、揺るぎない彼女の姿が思い出となって現れている。
「さあ、次はまたあの男に会いに行くとしよう。もう一人の小悪党……スミルノフの元に」
リゲルデは言うや、即座に
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