全世界接近戦㉘


 ※※※


 島崎宗孝の計略は、彼の予想通りの展開を見せていた。

 彼ら反政府軍ゲッスンの谷防衛隊の生き残りの執念は、この地球全体に多大なる悪影響を及ぼしている。

「どういうことだ!? まさか、あの凶獣が……ヴェロンの大群が、街を、自治区を!?」

「そ、そんな……!? 凶獣ヴェロンは、もう数年も前にこの地球から全てを追い払ったはず」

「しかし、これは現実だ!! あの凶悪生物には、特殊な誘導兵器以外に打つ手がない!!」

「そうだ! 早くうちの自治区にも、あの兵器を取り入れなければ、全滅もまぬかれんぞ!!」 

 島崎らが子飼いにしている凶獣たちは、特殊な誘導装置により人間の知恵を得ながら敵の拠点を襲撃している。

 彼らにとっての敵とは、まさにヒューマンチューニング手術を施された自治区の住民全員を意味している。

 島崎宗孝は、元からこのようにヒューマンチューニング手術を施された人々を根絶やしにしようとする過激な思想の持ち主ではなかった。

 だが、あの〝ホワイトグレープ剤の事件〟をきっかけに、次第にミックスという存在をかたくなに憎むようになった。

 そして、かのヴェルデムンドの戦乱の終結を機会に地球へと帰還した彼であったが、そこで彼に力を貸したのが、

「あのシルクハットの大男は、私の願望を叶える術を持っていた」

 というわけである。

 彼らの計画は五年越しであった。

 彼が帰還したばかりの頃は、地球の住民はまだヒューマンチューニング技術に懐疑的であり、まさか今現在のように、そのほとんどが機械の身体に変換しようと言う波が訪れていなかったのである。

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