災厄の降臨㊿
尋常ではない力で叩き合わされた石は、線香花火のような激しい火花を伴って液体を含んだ枯れ枝目掛けてはじけ飛んだ。
火花が着地すると、一瞬の間を置いて暗夜に眩いばかりの炎が膨れ上がった。メラメラと燃え上がるその怒りにも似た豪炎は、たちどころに上下左右に燃え広がり、今まで鎮静を保ちつつあった谷底を、まるで豊作を祈願する豪勢な祭りのように激しく賑やかにさせたのであった。
※※※
「な、何事だ!? 一体何が起こったというのだ!?」
モニターを見つめていた桜庭が戸惑いを見せた。子飼いの凶獣に取り付けたカメラが、異様な光景を捉えたからだ。
「どうした、桜庭中尉!? 何を慌てふためいておる!?」
「し、司令! 凶獣たちが、我らの凶獣たちが……!!」
一気に燃え上がる熱風の煽りを受けて、空高く舞い上がっていたヴェロンの群れが降下を余儀なくされる。
「そ、そんな馬鹿な!? なぜだ!? なぜ、無敵のヴェロンがあのように力を無くす……!?」
運営本部は、島崎の震え声に支配された。傍らで同じように言葉を無くした桜庭も呆然と立ち尽くす。
「何をしておる、桜庭中尉!! 早く!! 早く、子供たちを撤退させろ!! でなければ、さらに被害が出るぞ!!」
言われて気を取り直した桜庭は、指示命令のワードが入ったカード型の端末にいくつかの言葉を入力すると、
「司令! あの女は如何いたしますか?」
「ええい、そんなものはどうだっていい!! 今はあの者どもに関わって、戦力の数を失うわけにはいかんのだ!!」
「りょ、了解しました。では、全軍の撤退を進めます……」
歯ぎしりをする島崎を横目に、桜庭はシグレバナをくわえ込んだヴェロンにも撤退の指示を与えた。
「よくも、よくもやってくれたな、あの女どもめ!! 再度戦場で会うことがあったら、こんどこそ、粉みじんにぶちのめしてくれる!!」
次章へと続く
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