災厄の降臨㊸


 かの情報核融合自治区が襲われたことからも、その考えに辻褄つじつまが合う。

 自治区に住まう人々は、誰一人例外なく肉体に機械装置を施したミックスである。

 その肉体の機械部分のエネルギー消費を解決するために、彼らは情報核融合装置の導入を快く取り入れたという経緯がある。

 本来、肉食系植物が人間を襲う理由は、彼らの繁殖のための捕食に過ぎない。にもかかわらず、半サイボーグ化されたミックスの存在に主眼の置いて一定のエリアを襲い、そのエリアごと破壊する行為は肉食系植物の本来の目的を逸脱している。

 つまりは、この一連の凶獣襲来の流れには、基本的な矛盾が内包していたというわけだ。

「なぜか、情報核融合装置を取り入れた自治区が次々と襲われ、そして今、身共らがこうして襲来を受けてしまっています。となるとこれは……」

 シグレバナにも、これらの凶獣たちを仕掛けた者たちの輪郭が朧気おぼろげながられはあるが見えてきたのであった。

 まさか、まさか……。

 まさか、あの人物たちが、このようなことを考えていたとは。そして、このような恐ろしい計画を企てていたとは――。

 シグレバナがそこに駆けつけると、谷の右翼に生い茂っていた木々は所々がなぎ倒され、まるで虫食い穴のように斜面が禿げ上がっていた。

「カレンバナ!! カレンバナ!! どこにいるのです!?」

 さすがのカレンバナでも、何重にも及ぶの凶獣の攻撃を受けては命の保証はない。

 シグレバナは、自らの生体反応センサーに投影されないことに焦りを覚えながら、

「あ、あそこか……!?」

 必死の思いで空を見上げると、そこに一つ光る命が助けを求めていることを覚った。

「カ、カレンバナ!?」

 彼女は絶望に駆られた。なんと、カレンバナの身体は凶獣のくちばしにぱっくりとくわえられ、闇夜の上空に縦横無尽にもてあそばれ続けていたからだ。

「カレンバナ!! カレンバナ!!」

 何度も呼びかけたが、しかしまるで応答がない。

 

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