災厄の降臨㊷
小紋は慌てて崖を下った。
「僕たちの作戦が、凶獣たちに読まれていたんだ……」
彼女たちの作戦は、谷に落とし込んできた凶獣の群れを丸太の矢で迎撃し、その撃ち漏らし上昇して来たものを、小紋の接近戦で叩き落す算段だったのだ。
しかしこの状況は、その作戦の根底から崩されたのだ。
まして、その相手の数は五十匹以上にも及ぶ。いかに素手で凶獣を倒せる腕を持つ小紋にも限界というものがある。
(このままじゃ、僕たちは絶対にやられる……。こんな時、羽間さんならどうするだろう?)
崖の急斜面を滑り降りながら彼女は考えた。
今までとは違い、知性を得てしまった凶獣を相手にするのには、こちらにもそれを超える知恵が必要である。絶対にこのままの力技では勝てない。
小紋は、転げ落ちるように急斜面を滑り降り、谷の岩山の中腹まで降り立った時、
「あ
思わず尻を両手で抑えた。
思い切り下ってきたせいで尻の表面が痛い。戦闘服に身を包んでいるお陰で破れこそはしていないものの、きっと中身は真っ赤に腫れ上がっているに違いない。
「ん、まてよ……」
そこで小紋はひらめいた。
「そうか!! この手があったよ。もしかすると、何とかなるかもしれないよう!!」
カレンバナの窮地に、シグレバナは谷の右翼に向かった。
「カレンバナ、待っていて!! 今、身共が駆けつけるから!!」
脳に直接通信を送ると、悲痛なカレンバナの声が返って来る。
凶獣たちは容赦がない。本来なら凶獣は肉食系植物で、彼女らのような半サイボーグ人間を好んで襲ったりはしない。だが、ここまで執拗なのであれば、それは正に、
「鳴子沢さまの仰っていた通り、きっと凶獣どもの狙いは、身共らの命なのでしょう」
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