災厄の降臨㊳
初動に、左翼に位置したシグレバナが丸太の矢を宙に放った。
シグレバナの目には、夜間でもはっきりとその存在が黙認できる暗視センサーが内蔵されている。
凶獣は夜間でも動きを鈍らすこともなく、木の葉を返すように容易にその矢をかわした。
「ええい、なんという動き!! カレンバナ!! ヴェロンがそちらに向かいましてよ!!」
半ばその動きを予測していたかのように、シグレバナは直接カレンバナの脳にメッセージを送る。
「ええ、心得ていてよ、シグレバナ!! あの凶獣は身共が必ず……!!」
言って彼女は急速展開するヴェロンに狙いを定め、
「落ちなさい!!」
ほどよく
刹那、反動によって、びゅんと空を切り裂いた先の尖った強烈な丸太が暗夜の虚空に打ち出される。
すると、初手で急な展開を余儀なくされたヴェロンの体躯は無防備となり、そのままカレンバナが放った丸太の矢の餌食となる。
「ギュエエエエ……!!」
漆黒の谷間に、凶獣の怒号にも似た悲鳴が響き渡った。
見事命中!
放たれた丸太の矢は、凶獣ヴェロンの首筋辺りをとらえ、そのまま真っ逆さまに谷底の川の流れに飲み込まれて行った。
「やったわ、シグレバナ!!」
「やりましたわね、カレンバナ!!」
彼女たちは、お互いの連携にまたとない達成感を覚え、そして互いの技量に酔いしれた。
だが、これでことが終えるはずもない――。
「いけません、カレンバナ!! 敵がまだ迫って来ています!!」
シグレバナが、戸惑い気味に語り掛ける。
「凶獣がまだ来るですって? でも、この身共たちの連携さえあれば、それも敵うはずです」
「いえ、それがそうとばかり、甘くはないようです」
「それはどういうことですか、シグレバナ?」
「ええ、敵は……迫り来る敵影が、あまりにも無数に存在するからです」
「な、何ですって!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます