災厄の降臨㊲
小紋は、仲睦まじい二人に微笑みを返した、その瞬間である――。
「何やつ!?」
シグレバナが何かを感知したのか、咄嗟にテントを飛び出して行った。
「シグレバナ!」
「シグレバナさん!」
そろって二人も彼女を追った。
「なにを察知したのですか!? シグレバナ!!」
カレンバナが、豊満な胸の谷間に手をやり、あらゆる方向を見渡す。
そろって、小紋も腰ベルトに手を掛けて電磁トンファーを抜き出すと、
「来るよ、お二人とも!! この鋭く大きな風切り音はきっと……」
「おっしゃる通り、まさしく凶獣ヴェロンが迫り来る音です!!」
シグレバナが、両手を耳に当てて叫んだ。
「性懲りもなく、身共らを襲って来るとは……」
「やつら、何が目的で……!?」
カレンバナとシグレバナは同時に構えると、
「シグレバナ!! 行きますわよ!!」
「ええ、カレンバナ!! あの者たちに、身共たちの実力を見せつけてやりましょう!!」
言って彼女たちは、跳ねるように谷の左右に散開して行った。
「カレンバナさん、シグレバナさん気を付けて!!」
小紋は大声で彼女らを気遣うと、自らも谷を駆け上がり、岩肌が突き出した崖の突端に立った。
「あとは、あの二人がどれだけやってくれるかだけど……」
相手の考えすら読めないこの状況に、即刻対処するにはこの方法しかない。
カレンバナとシグレバナの二人は、まだ日が暮れぬ間に谷の中腹に、細めの丸太に細工を施した投擲装置を五十基ほど仕掛けていた。
「たとえ身共らに……!!」
「あの凶獣を倒す力が備わっていなかろうとも……!!」
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