災厄の降臨㊴


 シグレバナの脳内に搭載されたセンサーは、最大で半径五百メートルの敵を感知できる。

 そのセンサーに感知された凶獣の数は計り知れず、それはまるで農作物に群がるアブラムシのように暗夜の空中を飛び交っている。

「では、シグレバナ!? 今、最初に飛んできた凶獣とは……!?」

「ええ、おそらく、カレンバナ。あなたのお考えの通り、きっと偵察を兼ねたダミーのようなのだったのでしょう……」

 彼女たちの衝撃は、深く足の裏を通り越して地の底にまで及ぶ。


「風の流れが……。これはきっと……」 

 崖の上の小紋も、その無数の風切り音を感じていた。

 少し前まで星は見えていた。新月ではあるものの、薄っすらと月の光も感じていた。

 だがこの瞬間、その道しるべとなる光は暗夜に閉ざされ、大量の凶獣たちの青々とした獣臭に支配された。

「これで僕の予想が当たっちゃったのかもしれないね。こんなふうに凶獣たちを手懐けるなんて……」

 彼女は、電磁トンファーのスイッチに手を触れると、またそれを腰のホルスターに戻し、

「聞こえますか? カレンバナさん、シグレバナさん」

 通信機を片手に、彼女たちの脳に直接連絡を取った。

「はい、こちらカレンバナ。よく聞こえていますわ、鳴子沢さま」

「ええ、鳴子沢さま。こちらシグレバナの方も感度良好ですわ」

「なら率直に言います。あれは……あの凶獣たちの目的は、おそらくお二人を亡き者にしようとこちらに向かって来ています」

「何ですって……!?」

「まさか、そのようなこと……!?」

「いえ、これは僕の推論でしかありませんが、あの凶獣たちの行動を鑑みれば、結論が導き出されるはずです」


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