災厄の降臨㉘


 シグレバナは、三人が取り囲んだ眼前に、自らの記憶データのホログラムを投影する。

 その光景をかんがみれば一目瞭然である。間違いなく襲ってきた凶獣らは、彼女たちをもてあそんでいる。とりもなおさず、そこに何ら知性や品性の欠片も感じることはない。

 それを踏まえて、

「それで、いかがお考えになられますか? 鳴子沢さま」

 シグレバナが、腕組みをして押し黙ったままの小紋に言葉を振った。

「え、あ、う、うん……。そ、そうだね、確かにここまではシグレバナさんとカレンバナさんの考えの通りだと思うよ。だけど……」

「だけど、何で御座いますか、鳴子沢さま?」

 シグレバナは、妖艶な瞳をキラキラと見開いて問う。

「う、うん……。だから、その……。お二人が言う通り、ここを襲った凶獣たちは、シグレバナさんの記憶データに映った物を見ても、僕たちがヴェルデムンドに住んでいた頃とは全然違っているよね。だけどさ、だからと言って、こうなんか、ひとえに進化したとか、知能が向上したとか、そういうのとはなんか違うんじゃないかと思うんだよね」

 小紋の何か含みを残した言い様に、

「なるほど……。まあ、言われてみれば、そうかもしれませんね。ですが、鳴子沢さま。それだけで御座いますか?」

 シグレバナは、小紋の先ほどからのたどたどしい対応が気になっていた。

「そんなことはないよ、シグレバナさん。僕は、どっちかって言うと、現役の時も分析とかは苦手だったんだ。さっきも言ったけど、そういった情報はみんなマリダに任せちゃってたし」

「そうなので御座いますか? なら良いのですが……」

 彼女たちは、優秀で名高いアンドロイドのマリダ・ミル・クラルインの存在も知っていた。それだけに二人は、

「さもありなん」

 と、その場は納得するに至った。

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