災厄の降臨㉖


 ようやく燃え盛る集落の周辺にまで辿り着くと、そこは異様な熱風に包まれていた。

 三人は、あらかじめ用意しておいた原子力ニュークリア対策も兼ねた遮蔽スーツに身を包み、ゆっくりと防護柵の五メートル前まで近寄った。

「これはひどいですね。もはや、見るまでもなく生き残りは皆無でしょう……」

 軽くため息をついて言葉するカレンバナ。そして、

「まさか、あの鉄壁の防護柵をも破壊しまくるとは、やはり相手は凶獣と言って間違いないのでしょうか……」

 と、周囲の警戒を兼ねながら、自慢の解析能力を駆使して現状分析をするシグレバナ。

「ああ、やっぱりそうだよ、カレンバナさん、シグレバナさん。この地図からすれば、ここは第百五十二自治区域だね。ということは、この奥には間違いなく〝小型核融合〟が存在していたってわけだから……」

 小紋が、出掛けに島崎から預かった地図を、緯度と経度をコンパスで計り見ながら納得する。

「となると、ここに強襲をかけた者の目的は、やはり〝小型核融合〟ということなのでしょうか?」

 カレンバナは言いながら、自らの足元に落ちている緑色の長い羽根のようなものを見つける。

「カレンバナ、それはもしかして?」

 シグレバナの問いに、

「ええ、これは間違いなく凶獣ヴェロンの尾翼です。なにより、この屈折した長い針金のような文様がそれを示しています」

 彼女が言う通り、それは凶獣ヴェロンのもので間違いない。それは、ここに居る三人の共通して知り得る常識事項だ。

 そして、より目を凝らせば、そのように同じ羽根の残骸がそこらじゅうに散乱していることが分かる。

「ううん、そうかなるほど。もしかすると、ここの自治区の人たちは籠城を決め込もうとしていた……と見ていいね」

 小紋がヴェロンの尾翼を炎に照らしながら言うと、

「身共もそう考えます。しかし、この自自区の人々は、その生き残りの選択を間違えたということです」

 カレンバナが言い、

「ええ、そうですね。この状況から察するに、ここを襲ったヴェロンたちは、最初からここの自治区の人々がそうすることを狙っていたのです」

 シグレバナも納得していた。

「なぜなら、凶獣ヴェロンの目的は……」

 小紋が言葉を投げかけると、

「きっと、小型核融合だったから……」

「ということになりますわね……」

 二人は、ぞっとした表情で黒煙を上げながら燃え盛る自治区の跡を見つめる。


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