災厄の降臨㉕


 無論、その当時の彼女たちは、

『ヴェルデムンド新政府軍に第87特殊工作部隊あり――』

 とまで称され、敵味方問わず誰からも恐れられ、敬わられ、畏敬の念さえも払われていた。

 だが、現在の状況にあっては、それはもはや過去の話であり、しかもその特性が現在のあだとなりつつある。

「今回の偵察の件にしても、きっと島崎様たちにとって、良い口実だったのかもしれません……」

 シグレバナは、未だ治り切らない腕を見つめてうつむく。

「そ、そんな!? シグレバナさん!!」

 小紋がすかさず声を掛けるが、

「ええ、シグレバナの言う通りです。それは間違いありません。ただでさえ生きて行くのがやっとのこの時代。身共らのような存在は、ただ浪費を重ねるだけの厄介者以外の何ものでもありません……」

 ようやく、散乱した荷物の片づけを終えたカレンバナ。彼女は、おもむろにシグレバナに寄り添うと、切断された彼女の右腕の修復をいそいそと手伝い始めた。

 そんな二人に、小紋はそれ以上掛けられる言葉が見つからない。



 警戒を強めながら歩みを進めて行く三人。

 あれから三時間も経つと、森の中から見える合間の東の空が白み始めて来る。

 北の山向こうの集落は、もくもくと黒煙を吹き上げながら、熱された鉄塊のような炎をとめどなくおどらせている。

 今度、同じような敵を相手にすれば、間違いなく消耗戦に至る。

(なんとか、このお二人には僕の作戦に同意してもらうことは出来たけど、それでもなんだか……)

 小紋は、二人の背後から見つめる。

 彼女たちの見事にくびれ整った肢体の妖艶さは、紛れもない自信に満ち溢れている。だが、それは単に表面的なものであり、内面的な余裕は感じられない。

 

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