災厄の降臨㉓


 小紋は、まだ信じられぬと言った表情の二人に対し、

「僕は、お二人が大体この辺りに着地するのを予測して待ってたんだよ」

「ええっ、なんですと!? 鳴子沢さまは、身共らの動きを予測していたので御座いますか?」

「そ、そんな……。予測演算装置カリキュラマシーンさえ埋め込まれておられぬというのに……」

 二人はまだ信じられなかった。肉体の八割以上を機械に換装させた彼女たちにとって、ネイチャーである小紋の神技ともいうべきこの行動こそが、まるで予測の範疇はんちゅうを超えている。

「何も不思議なことじゃないよ、カレンバナさん、シグレバナさん。僕は、ただ時間の流れに逆らわずにタイミングを合わせただけ。そうじゃなかったら、僕みたいな力も持たない人間が、あんな大きな凶獣なんて絶対に倒せないからね」

 今までの状況がまるで虚飾の事実だったかのように、けろっとした表情で受け答えする小紋。

 元87部隊の両名は、再び呆けた顔を見合わせて、

「これは参りましたわね、シグレバナ……」

「本当にこのお方は、筋金入りの背骨折りさまのお弟子さまなのですね。カレンバナ……」


 

 状況は深刻である――。

 なぜなら、この数分前の戦闘で、カレンバナ、シグレバナ両名のバッテリー残量が六割を切ってしまっていたからだ。

「まさか、このような不意打ちを食らわせられようとは、思ってもみませんでした。ねえ、シグレバナ?」

「そうですね、カレンバナ。しかし、これが仕掛けてきた相手側の策謀であるならば、このまま闇雲に先へと進むのは無謀というものでしょう」

 麗しき相貌の両名のまつげが、木々の間から降り注ぐ月光の淡い光に照らされる。すると、それがより一層二人の儚さを感じさせる。

「じゃあさ、ここからの戦闘は全部僕に任せてよ。お二人には、僕の支援をしてもらうということで、ね? どうかな? カレンバナさん、シグレバナさん」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る