災厄の降臨④
カレンバナもシグレバナも、顔を真っ赤にしつつ目を見開いたままの小紋に、妙に笑いが止まらなかった。
しかしそれも束の間、急に小紋はうなだれ
「な、鳴子沢さま?」
「あら、これはやり過ぎてしまったみたいね」
「申し訳ございません、鳴子沢さま」
「鳴子沢さまが、こんなに
今までの彼女たちの煽り言動は、特に何の悪気もないものだった。言わば、ただのコミュニケーションの一つである。
だが、ただの師弟関係ではないはずの小紋にとって、それは
「ははっ……。お二人は、羽間さんと、
小紋は
そんな、あまりにも深刻そうな彼女の態度に、二人は心を締め付けられ、
「違います! 今までの言動は、全部嘘です、すべて虚構なのです!」
「そうです、カレンバナの言う通り、これは身共らの軽い戯言に御座います!」
「いいよ、そんなに気を遣わなくたって。だって、羽間さんは、結構そういう人だもの……」
「そうではないのです、鳴子沢さま! 確かに背骨折りさまは、身共らと幾度か命のやり取りをしたことはあっても」
「あなた様がお考えになっているような、大人の関係には一切至っておりません!!」
二人は真顔になって弁解した。
カレンバナ、シグレバナの両名は、小紋がこのようになってしまうのも無理もないことだと思った。なぜなら、彼女らとて羽間正太郎を慕う気持ちは一緒なのだから。
何を隠そう、彼女らとて、かの戦乱時中に何度も煮え湯を飲まされた経験を持つ者同士である。
そんな女性特殊工作員――87部隊の面々は、異彩を放つ孤児で形成され、上層部が思うがままの操り人形として育てられて来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます