スミルノフの野望㉛
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「急いで!! ねえオツ君、急いで!! このままじゃ、何か大変なことが起きちゃう!!」
小紋は、額に汗しながら前方を睨んだ。ここは森の中であり、急こう配の激しい山の中である。
「ハ、ハイッ……。デ、デモ、ボクはこんな森の中ヲ走るノハ、得意ジャナインデス!!」
塀の中の面々は、皆が〝ミックス〟であるために、徒歩と言えども追いつくに難しい距離であった。
「そんなの分かってる!! でも今はやらなきゃいけないの!! お願いだから、早く行って!! デュバラさんの所まで早く行って!!」
「ハ、ハイッ……」
なにも武装は銃器だけとは限らない。彼らは、自由に肉体の一部を換装させることが出来る。たとえそれが、どんなに人道や倫理に反するものであったとしても。
「もう、あのピンク教団が
桃色マカロニ教団――通称ピンク教団は、その権制欲と承認欲求に駆られることで、換装させた強靭な肉体こそが正義であると錯誤し、それが元で自らの組織の崩壊を招いた。
しかし、その再来ともいえるこの塀の中の面々は、あのような一つの組織と言うわけではない。
「ピンク教団という集まりは、元々が立場の弱い人たちが寄り添い合って助け合おうとするための互助組織から始まったと言われてたんだよ。だけど、今回のはまるで違うんだよ、全然違うんだよ、オツ君」
「どういうコト? 小紋オネエチャン。ボクにも、分かるようにオシエテ」
「うん。今回のケースはね、全てが意図的に仕向けられているんだよ」
「イトテキ?」
「そうなんだよ。今回のは、ね……これは僕の推察でしかないんだけど、あのピンク教団の事件を踏まえた上で、こういった誘導をかけているんだと思うんだよ」
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