スミルノフの野望⑳
小紋とデュバラは、作戦前に互いの意思が揺るがぬようにと、それぞれの考えを確認し合った。
今回の策は、現在の状況を得るためのものである。現況では、世界的な動向を示す情報は塀の中の人々のみに限定され、塀の外に生活する者には一切提供されていない。
それゆえに、彼女らは塀の中の人々をおびき寄せ、それらから情報端末を奪い、何がどこでどうやって動いているのかを知ろうとするものである。
「小紋殿。私が〝成人の赤子〟と呼ばれる人々を引き付け囮となる」
「そして、デュバラさんがその集団を塀の外でぐるぐるやっている間に、僕が塀の中の人たちから端末を奪って情報を得るんだね?」
「そうだ。彼らは必ず塀の中と外を行き来するためのIDの入った携帯端末を所持している。それを上手くして奪えれば、現況のこの国の状況や、地勢的状況も鑑みられるというものだ」
「うん。そうすれば、途中であやふやになっちゃったクリスさんの居所だって分かるかもしれないってことだね?」
この状況になる以前、デュバラにはクリスティーナの居所が分かっていた。だが、そこは昔の仲間である〝黄金の円月輪〟の息のかかった厳重な警備が施されていた。
よって、彼は〝三心映操の法術者〟とされる鳴子沢小紋の力を借りに再会を果たしたのだ。
だが、今のこの状況となっては、あの黄金の円月輪という組織さえ、どう動いているのか分からないのだ。
まして、直線距離にしてたかだか百キロメートルにも満たない目的地にすら、そう簡単にはたどり着けない状況にある。
「よし、時間だ! 小紋殿、作戦開始だ」
「うん、行こう! やらなきゃならないときは、やるしかないんだもんね!!」
デュバラが頷くとともに、小紋は両方のてのひらで自らの頬をパチンと叩いた。
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