スミルノフの野望⑲
山の中に無造作に
「思えば憐れ――。これらの民々も、元はと言えば時代に踊らされ、現況に流され、そして流行り病に状況を狂わされた悲しい人間の末路――。しかし、何ゆえに塀の中の連中はこれを忌み嫌うのか……?」
通称〝成人の赤子〟と揶揄された人々は、浮遊戦艦に廃棄投下されて以来、ことごとく人類の厄介者としてその立場を余儀なくされて来た。
彼らは本能のまま動き、統制が取れず、自己のコントロールすらままならないというところまで堕ちていた。ゆえに、たびたび自覚のない暴徒と化して、集落になだれ込む様が社会問題となり、それらを忌むべき存在として認識されてしまった経緯がある。
しかし、中には同じ人間としてどう扱うべきか、どう対処するべきかを議論する動きもあったのだが、少し前までの逼迫した社会情勢から、その精神的余裕が与えられず、このように世界的に彼らを強制排除しようとする動きになったのは言うまでもない。
「以前に、小紋殿がトラウマを抱えてしまったあの一件が示すように、悪意を持たぬ集団行動は人をどん底の恐怖に陥れる。ううむ、分からぬのではないのだ。塀の中の人々の考えも……」
「うん。だけど、それは塀の中の人たちも同じでしょ? だって、今の塀の中の人たちだって、他から見れば厄介な存在そのものになっちゃったんだもの。そして、もっと俯瞰してみると、この状況にことを追いやった首謀者が一番厄介なんだよね。それは、ただ人間のそういった心を悪用しているだけなんだもの。僕は、そこが絶対に許せないんだよ」
なんとも、いかにも小紋らしい考え方であった。それは、〝ヴェルデムンドの背骨折り〟を師匠に持つ戦略思考の表れでもある。
「うむ。小紋殿の言う通り、ここまでこの世界を
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