驚天動地の呪い㉖
「そう、そんなことがあったの……」
小紋と三ノ宮竜子は、近くのビルの一画にあるカフェで向き合っていた。
以前はサラリーマンでごった返していたこの辺りも今や閑散としており、道行く人々はほとんどラフな格好で通り過ぎて行く。
「どうぞ。ここのコーヒーはとてもおいしいのよ」
竜子は小紋ににっこりと微笑んで見せた。
小紋は、一杯三千五百円もするコーヒーにたじろぎながらも、
「は、はい、じゃあ……いただきます」
そう言って、遠慮気味にカップの淵に口を付けた。
小紋は、竜子にこのカフェに連れて来られるなり、今まで自分自身に起きたことを洗いざらい語った。
自分がこの近くの出身であり、ある男性に憧れてあちらのヴェルデムンド世界に渡航したこと。
そして、その男性と運命の出会いを果たしたのちに弟子として学んだこと。
父親に強制送還されて以来、〝ロニ教〟を代表するような狂信的集団と命を懸けて戦ったこと。
その背景を認められて抵抗組織〝シンク・バイ・ユアセルフ〟の代表に抜擢されたこと。
そして、何者かの画策により、その代表の座を更迭されてしまったこと、などを――。
「ええ、何となくだけど、その一件はこのわたくしも耳にしておりましたわ。あなたが代表の座を追われてしまったことは」
「それよりも、三宮さん。どうして、僕のことを知っていたんですか?」
「ああ、それはね。わたくしが、何度も女優としてシンク・バイ・ユアセルフの医療施設に慰問に訪れていたからよ。そこで何度も、あなたの顔をお見掛けしてしていたって話。まあ、当時のあなたは忙しそうで、こちらから声を掛けられる状態ではなかったのだけど……」
「ええっ、そうだったんですか。僕、昔から三ノ宮さんの大ファンだったのに……」
気まずそうな表情でうつむく小紋に、
「ねえ、それよりも三ノ宮さんじゃなくって、下の名前で呼んでいただけないかしら。なんだかその方が、堅苦しくなくて良いわ」
「え、あ、ええ……。じゃ、じゃあ……竜子さん。なんで、この僕なんかをお茶に誘ってくれたんですか?」
「なんでって。そうね。それは自分でも分からないわ。ただ、放っておけなかったのよ、あなたを。本能的にね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます