驚天動地の呪い㉕
「そうではありませんわ。これは事実なのです」
その女性の声の主は人々の群れをかき分け、そしてさもそこがステージの上であるかのように堂々と意見を述べて来た。
「わたくしたちは、先ほどもあの交差点で、あなたたちの車両にしたことと同じように、あの交差点の先で、パトカー相手に飛び込んだのです。でも、結果はいつも同じ。確かに身体に激痛は走るものの、ものの一分もすれば生き返ってしまうのです。それも以前の無傷の状態と同じように」
その女性は凛として背筋が伸び、かなり堂々としている。中年の域には達しているように見えるが、それでいて鼻筋が通って、いかにも気品に満ち溢れている。
「あ、あれ? あなたは……」
小紋が女性の顔を見て、
「たしか、女優の三ノ宮竜子さんですか?」
小紋は彼女を知っていた。無論、メディアの画面向こうの話ではあるが。
「あら、このわたくしの顔を存じ上げて下さっているのね。それは光栄だわ。そう、いかにもわたくしは三ノ宮竜子です。でも、こんな時代ですから、女優なんて職業は休業しているも同然なのですけど」
「すごい、三ノ宮竜子さんだ!! 僕、昔から大ファンなんです。サインください!!」
小紋は大喜びで彼女に駆け寄った。
「あらまあ、嬉しいわ。この状況でそんなこと言われるなんて」
小紋は、持っていたメモ帳とペンを彼女に渡してぴょんぴょん飛び跳ねて見せる。
「でも、三ノ宮さん。これ、どういうことなんです? 何かの映画かなんかの撮影なんですか?」
「そうじゃないわ。これは正真正銘のノンフィクションよ。それも、わたくしの職業とは一切無縁のね。それより、あなた……」
「はい?」
「そうよ、あなた。あなたは以前、〝シンク・バイ・ユアセルフ〟で代表を務めていた鳴子沢小紋さんよね?」
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