驚天動地の呪い⑤


 ※※※


 小紋は、その場から離れることが出来なかった。山間の大集落に、生きたままの人々が、カプセルに入ったまま無造作に山積みにされているのだ。

 しかし、かと言って彼女がここに居てカプセルを見守っていても、何も解決するものではない。

「分かってる。そんなことは分かってるんだけど……。でも、こんな状態の人たちを放っておけないよ」 

 ざっと周りを見渡しても、その数はおよそ一万体を下らない。乱雑に重ねられた状態から察しても、これは浮遊戦艦側に用済みと判断されて廃棄されたとしか思えない。

「最初から分かっていたけど、浮遊戦艦側は人を人と思っちゃいない。そんなことは分かってる。わかってるんだけど……」

 浮遊戦艦の真の目的は分からずとも、相手は人類の味方ではないことだけは心得ている。それだけに、用済みとなった人々が〝廃棄〟されてしまったことだけは理解できる。

「一体、どうして捨てられちゃったんだろう? 何が起こっちゃったんだろう?」

 まだ、小紋は知らないでいた。彼ら〝投棄〟されてしまった人々が、あのウィルスに感染し、あり得ない病を発症してしまったことを。

 小紋は、胸のポケットからペンライトを取り出し、の表情を見て回った。

 すると、

「え……!?」

 唐突に吐き気が催した。

 もう、それは人ではなかったからだ。

 一様に目はうつろだった。成人も幼児も、それこそ赤ん坊ですら目が半開きになり天を仰いでいる。そして、全てが恍惚の表情で涎をたらし、糞尿を撒き散らしている。

「こ、こんな。ひどい……ひどいよ」

 彼女は、それ以上の言葉を発せなかった。何がどうしてこうなったのかすら分からない状況であったが、なにゆえ浮遊戦艦側が彼らを投棄したのかの理由だけが分かる。

 その時――

 一つのカプセルから異音が発せられた。耳をつんざくような警告音である。

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