偽りの平穏、そして混沌⑰
※※※
「さて、これからどうするおつもりでしょうな、ミス鳴子沢は」
スミルノフの、にやけ笑いが止まらない。
そんな不敵な男に対し桐野博士は、
「貴様のことだ。どうせ、武器の入ったトランクには、これ以上、銃のような飛び道具の類いなどは入れてはおるまい。恐らくは、さっきのバズーカ砲を入れたことで、そう言ったものが他にもあるのではないかという錯覚を起こさせているのであろう?」
「ほう、ご明察ですな。さすがは稀代の天才と謳われる桐野博士だ。何でもお見通しというわけですな」
「たわけ!! 貴様にそのようなことで褒められても、背筋にゾッとしたものしか走らんわ!!」
「おお怖っ」
スミルノフは、わざとらしく肩をすくめるそぶりをし、
「ならば、そろそろお教え下さっても宜しいのではないのですか? 烈風七型シリーズに搭載された人工知能に関する研究データの在りかを……」
「クッ、誰が貴様のような愚鈍な輩になど教えるものか!! あれは、あの男があっての貴重な研究データじゃ」
「それではミス鳴子沢に対する攻撃はやめられませんな。これは取引です。最大限の有効な取引なのです。その貴重な研究データを、この私めが有効活用して差し上げようとしているのです。今後の人類の発展のために。さあ、教えてくだされば、たった今にでも、彼女への攻撃は取りやめます」
「クッ……なにをほざきよる!! 貴様はただ、私益のためだけにデータを欲しがっておるだけではないか!! それも、データをどこぞの組織に売りさばいて利益を得るなどと。いや、それだけではなく、貴様というやつは、この世界に更なる混沌を招き入れようとしている!!」
「ほほう、よくご存じで。そう、あなたの仰る通りですよ、桐野博士。私は、数年前のあの世界で起こった戦乱の中を堂々と駆け抜けて来た烈風七型起動試作機のことを高く評価しているのです。無論、その話はそのユニットのみならず、それを動かしたパイロットと、それをお作りになった開発者の技量も含めてね」
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