偽りの平穏、そして混沌⑬


 バズーカの砲弾は、激しい閃光を伴って小紋の対面に位置する木々にぶち当たり、そして驚異的な熱量を放ちながら四散した。密集した新緑と青空のコントラストが、一瞬にして真っ赤に歪んだ炎の列となって広がってゆく。

「まだまだ行くよ!!」

 小紋は残弾を確認すると、もう一度別の角度に狙いをつけて撃ち放つ。

 すると今度は、撃ち放った弾丸に対して正面から投げ苦無が飛来し、その苦無の当たった衝撃で目標地点に到達する前にさく裂を起こした。

「うわあっ!!」

 小紋は危うくその爆発に巻き込まれるところだった。彼女の受容体質レセプター能力があってこその離れ業だ。しかし、彼女御自慢のポニーテールに結んだ黒髪の先が、この爆発のお陰で少しだけ焼け焦げてしまった。

 それでも小紋は次の一手に入っていた。そう、彼女が無理やりにでもラウンドビークルを旋回させたのは、トランクに入っていた武器をランダムに放置させたかったからである。こうすることによって、彼女にとって不利な状況を、自分のホームグラウンドへと一変させる目的があったのだ。

 狙いは成功であった。相手もまさか、このような手を打って来るとは思っていない。小紋が森の一部を焼いたことで、以前は360度あった相手の投擲ポイントを半減させたのだ。

(敵は、僕に姿を見せていない。きっと、見せないことが敵の条件なんだ。だから、こちらが見つけにくいポイントを狭められさえすれば、何かしらの要点は浮かんでくるはず……。さあ、誰が相手何だかはしらないけど、ここまでやってくるからには、僕は容赦はしないよ)

 言いつつも、小紋の手のひらにじっとりと汗が滲む。

 

 ※※※

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