偽りのシステム233


 敵との遭遇実績がないということは、つまりエナが仕掛けたダミーの攻撃にすら被害を受けなかったという話だ。

「あのデータ上の亡霊攻撃の同士討ちですら被害を被らなかっただなんて……」

 とても信じられない話だった。反対方向とは言え、同じエリアを挟み込んで小型核を仕掛ける作戦である。あのような亡霊攻撃サイバーアタックを仕掛けられたのであれば、同じ第十五寄留跡地エリアで干渉を受けぬはずがない。

「ということは、まさか……!?」

 エスタロッサが目を見開くと、

「やっと気づいたようだな、エスタ坊や。我々はもう、第十五寄留跡地からすでに百キロメートルも離れた場所で待機している。この回線は、お前が気づいたとき用にと中継器で賄われている」

「や、やはり……。すると、この作戦は……」

「その通りだよ。何もかもがお前のために謀られた作戦だ。シュンマッハ陛下は、お前とその破滅に満ちた部下たちの命がご所望だ。陛下曰く、この世界を破滅に導かれるのは御免被りたいとのことだ」

「ま、まさか、大佐殿までもがシュンマッハに取り入れられているとは……」

「何を言うか、この破滅主義者の分際で! 確かにな、お前の思う通り、シュンマッハ陛下は名前の上に数え切れぬほど〝小〟がいくつ付いてもおかしくないぐらいの大の小心者だ。だが、どんな小物であっても、その役割が機能している間だけ利用価値はある。少なくとも、我々が生き残る糧と財源にはなろう。人はそうやってしのぎを削って生きて行くものだ」

「なんと、その根底の魂までも売ったか、エリケン大佐!!」

「おかしなことを言う。お前のように世界に混沌を招いて、その存在意義を求める狂った考えの者に、説教をされる覚えはないね」


 ※※※

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