偽りのシステム227


 ※※※


「ば、馬鹿な、あの融合種ハイブリッダーの女……。完全なる悪意の兵器……生物感情兵器を、こうも易々と……」

 エスタロッサは、歯ぎしり交じりにつぶやくと、メインモニターをきつく見つめた。

 確かにファッキン上等兵ことフィヨードルは、誰の目から見てもいけ好かない人物であった。しかし、だからこそ、それも利用し甲斐があると感じてここまで彼の改造を施したのだ。

「私がこの世界を混沌に導かねば、私たち十八番おはこの大隊の存在意義がありません。このままでは、あの男の主張通りに、ネイチャーという存在が、人類の理想の身体となってしまいます」

 エスタロッサには、もう後戻りする場所がない。もし、彼女が造形の美しい機械の身体に換装させたとしても、それは最早形骸に過ぎず、なんの実力も持ち合わせていない、ただのお飾り人形にしかならないのだ。

「であるならば、私は行きつくところまでこの肉体を改造し、自らの存在意義を示す戦場に変えて行かねばなりません。それには、この世界を混沌に導いて行かねばらならいのです。まずそれには、あの男の存在が最大の障壁となるでしょう」

 あの男とは無論、羽間正太郎のことである。彼女は、羽間正太郎という男に心惹かれていた。言葉にこそしていないが、心の中では彼に心底男性の魅力を感じていたのだ。

 しかし、それを認めてしまえば、自分のこの哀れな姿と、これまで歩んできた人生を全否定しなければならない。なぜなら、羽間正太郎はネイチャーの象徴的存在なのだから。

「だからこそ、私はあの男をこの世から抹殺せねばなりません。そして、自らにとっての最高の存在を示す世界を構築せねばなりません」

 要するに、エスタロッサの考えの根底は、あの生物感情兵器にされたフィヨードル上等兵と何も変わらない。彼女にとって、行きつくところはそれ以上でもそれ以下でもないところまで来ているのだ。

「さあ、行くのです、イシュトール・イシュⅣ型7号機から14号機!! お前たちの連携で、あの障壁となる融合種ハイブリッダーの女の息の根を止めるのです!!」



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