偽りのシステム223



 感情生物兵器として生まれ変わったファッキン――フィヨードル上等兵にとって、この姿こそが行きつくところの理想だった。この姿で死ねることが思いの果てであった。

「イーッヒッヒ!! イーッヒッヒ!! イーッヒッヒ!! 楽しい! 実に楽しいでごぜえますよ、化け物お姫様!! こんなに激しく異質なお姫様に出会えて、本当にあたしは嬉しく嬉しくて今にも大失禁してしまいそうでごぜえますよ」

「な、なんと下品な!!」

「イーッヒッヒ!! イーッヒッヒ!! この世に生を受けて早三十五年。今までは、いかに容姿の美しい女性をこの手に掛けようが、どんなに心の美しい女性をこの手に掛けようが、どこか虚しさを感じていたでごぜえます。ですが、あなたという女性を苦しめているこの快感、何ともこれまでにないえつというものがほとばしるのでごぜえます」

「な、何を……何を身勝手なことを!! 良いですか? わたくしには見えています。貴方の未来が……」

「イーッヒッヒ!! このあたしの未来が見えているでごぜえますと? ほほう。お姫様は占いが出来るのでごぜえますか? それは何とも乙女チックでごぜえますね。イーッヒッヒ!!」

「ええ、その通りです。わたくしは、貴方を占えます。そして、完璧に貴方の未来を占って見せます!!」

「イーッヒッヒ!! イーッヒッヒ!! そりゃあ傑作でごぜえます。それで、このあたしの未来はどんなものなのでごぜえますかね? もしかして、このあたしに聖夜を共にするでも現れるのでごぜえますかね? イーッヒッヒ!!」

「ええ、そうかもしれません。でも、そうでないかもしれません」

「イーッヒッヒ!! それでは占いにならないでごぜえますよ?」

「ええ、わたくしの占うものは、そんな生易しいものではありません。あなたの未来、それは……万が一にこのあたくしをこの世の亡き者にしたとしても、間違いなく虚しさを感じるということです。そして、どんなにわたくしを亡き者にしたとしても、これからも貴方は間違いなくか弱き女性たちをその手に掛けてしまうということです!」

「イーッヒッヒ!! イーッヒッヒ!! イーッヒッヒ!! なるほどでごぜえます。なかなかやりますな、化け物のお姫様。イーッヒッヒ!! 全くその通りだ、イーッヒッヒ!!」


 

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