偽りのシステム222


「仕掛け……仕掛けでごぜえますか? イーッヒッヒ!! イーッヒッヒ!! そのような感覚センスでは、このあたしの攻撃は永久に避けられませんでごぜえますよ?」

 言うや、ファッキンは不快な身のこなしで反転するや、再び不器用なナイフさばきでアイシャの間合いに詰め寄った。

「こ、こんなもの!!」

 アイシャは、歯を食いしばって立ち上がる。そして、さして素早さも感じさせない敵の攻撃を軽い身のこなしで避けたのだ。だが、

「イーッヒッヒ!!」

 ファッキンの不快な引き笑いが通り過ぎるや、今度は彼女の左わき腹に鮮血がほとばしった。

「きゃああ!!」

 まるで果物の表面をさくりと裂いたようにナイフの跡が残る。彼女は再三の衝撃に、今にも泣きだしたかった。

「アイシャさん! アイシャさん! アイシャさん! しっかりして!! 今あきらめちゃダメよ! ここでくじけたら、アイツの思う壺よ!!」

 エナは、ここぞとばかりに彼女を鼓舞した。女同士であるがゆえに、アイシャの気持ちは痛いほどよくわかる。しかし、だからと言って、それにただ同意するだけでは生き残れない。

「わ、分かって……分かっています、エナさん。こんな痛み、正太郎様の通って来た道に比べれば……」

 言ってアイシャは、自身でも自らを鼓舞しようとする。が、その大きな瞳から勝手に涙がにこぼれ落ちて止まらない。

「イーッヒッヒ!! イーッヒッヒ!! イーッヒッヒ!! 壊れている、壊れている。順調に壊れて来ているでごぜえますな、高貴でお美しいお嬢様。そう、これからがメインイベントでごぜえます。そんなお美しいあなた様が、成れの果ての糞になってゆく工程を、このあたしが表現して差し上げるでごぜえますよ」


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