偽りのシステム192
※※※
「ふう……、これで、何とか時間稼ぎは出来たわ」
エナは、額に汗しながらも、赤土まみれの荒野にペタリと座り込む。
「エナさん。お疲れになったでしょう? 少し休まれた方が……」
桜色に光る巨躯をしとやかにくねらせ、アイシャはエナの小さな体をそっと包み込む。
「ありがとう、アイシャさん。でも、ここはそのお気遣いだけ受け取っておくわ。だって、これからが勝負なのよ」
無論、エリケン八個中隊に、謎の亡霊を仕掛けたのはエナの仕業である。
彼女は、即興で自分でも驚くほど得体のしれない〝敵〟となるものを創造した。そして、それをエリケンらの補助脳に直接実体のあるものと認識させて戦わせたのだ。
「我ながら、これはちょっと恥ずかしいわ」
「何がですか? こんなことが出来るのなら、エナさんお一人でこの局面を打開できるのではないのですか?」
「そういう意味じゃないのよ、アイシャさん。そのね……一応、あたしって、その昔は天才少女とかもてはやされていたわけで……」
「ええ、存じております。しかしそれは、今もこうして揺るぎない実力となって表れているのではありませんか?」
「いえ、そうじゃないわ。あたし、たった今、自分の実力の無さを思い知ってしまったんだもの……」
「それって……。もしかして、
そう言ってアイシャは、空中に投影されたホログラミングモニターに目をやる。
するとそこには……。
「あたし、初めて絵心がないって言うか、こういったものを生み出すセンスがないんだなあって、改めて分かったの……」
エナが自ら創造し、エリケンらに遭遇させた未知の敵。その姿は、まるで幼稚園児の落書きにも似た八本足が生えたがちゃがちゃしたものである。おまけに、赤や青、黄色や緑といった原色系の傾向がかなり強く、それを目にしただけで
「あっ、ちょっと、アイシャさん! 今、アレを見て笑ったでしょう!? し、失礼ね、何かそれ失礼よ!!」
「い、いえ……わ、笑ってなんておりません。た、ただ……とてもカラフルなジャガイモのお化けみたいで可愛いかなって……。ちゃんと足も生えているし……」
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