偽りのシステム153

  

 

 言うや彼女の顔面が、火が点いたように真っ赤に染め上がる。

「えっへっへ、やっぱりキミは生粋の女の子だな。その照れた表情がたまんなく可愛い」

「な、なにを……!? 言うに事欠いて、そういうのこの場面で言いますか!? 死ぬか生きるかの瀬戸際だって言うのに!?」

「それは違うぜ、セリーヌちゃん。俺ァ、その死ぬか生きるかの瀬戸際だから言っているのさ」

「ええっ?」

 エスタロッサは眉間にしわを寄せて問い掛けると、

「へへっ、だってよ、ここで二人で仲良くおっんじまったとしたら、その亡骸は恒久的に縛り付けられた格好のままなんだぜ? そんな大事な相手だからこそ、俺ァセリーヌちゃんの良いところをこの目に焼き付けておきたいのよ」

「だからって、あなたねえ……!!」

 彼女はことさら耳の裏側まで真っ赤に染め上げ我を失う。おかげで飛翔が安定せず、目の前の巨木に体当たりしそうになってしまう。

「お、おいおい、大丈夫かよセリーヌちゃん。こんなんじゃあ、あの凶獣のボスたちとやり合う前に自滅しちまうぜ?」

「それは一体誰のせいだと思っているのですか!? こんな危ない目に遭ったのも、あなたがいきなり変なことを口走るから!!」

「ふふん、なるほどそういうことね。キミがそんなに乙女な性格だとは思ってもみなかったが……」

「大きなお世話です!! 私はこの世に生を受けてからこの方、殿方にそんな言われ方をしたことがなかったのです!!」

「ふん。じゃあ後生だ、もっと言ってやろう。キミはとにかく可愛い。キミはとてもセンスが良い。キミは本当に魅力的だ。キミは真の優しさを持った女性だ。キミはなんてったって最高の女性だ……」

「ば、馬鹿なんですか、あなたは!? そんなことを言ったって、私、あなたに何も出来ませんよ?」

「良いんだよ。ここは俺の言葉を素直に受け取ってくれ。俺を、キミの魅力で自分の言葉に酔わせておいてくれ。それをここで言い切ることができれば、俺ァこの場面で何も悔いを残すことがなくなる……」

「え、そ、それは……」



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