偽りのシステム149



 エスタロッサは、正太郎の言葉に妙な説得力を感じた。

(これが、この人の可能性というものですか……!?)

 彼女は、正太郎の言葉通りに猛スピードで垂直上昇した。ダメージを負った両翼はきしみ、尾翼が揺さぶられ、背負っている正太郎の身体が空気抵抗により凄まじい音を立てて肉揺れを起こす。

「大丈夫ですか、羽間正太郎!?」

 エスタロッサは、彼を気遣いながら背中に語り掛けるが、

「き……気にするな、俺のことは、セリーヌちゃん!! それより……後続はどうだ!?」

「はい、あなたの目論見通り、束になっていた数多のヴェロンが、少しだけばらけて来ています」

 エスタロッサは、脳裏のモニターに捕捉されている点滅をうかがい知ると、それだけで感心した。

「そうだ、そうだとも……!! なんてったってヴェロンてえ生き物は全部が全部同じ能力があるわけじゃねえ。さっきみてえに馬鹿でかいのも居れば、俺たちの半分ぐらいしかねえ小さいのも居る。こうしてセリーヌちゃんの飛行にぴったりくっ付いてこれるのは、そこそこ中型の、しかも年齢的に脂の乗った、言わばエース級のやつらだ」

 正太郎は言うなり、腰ベルトに携えた超振動デュアルスティックを両手で抜くと、

「良いか、セリーヌちゃん。俺が今から言う一、二の三って合図のタイミングで急旋回して奴らの懐に飛び込むんだ」

「え、ええっ!? そ、そんな……。そんなんじゃ、命がいくつあったって!?」

「何言ってやがる!! ここに来てビビッてんじゃねえぞ、セリーヌちゃん!! キミは生き残りたくねえのか!? 生きて自分の選んだ人生をまっとうしたくねえのか!? もう一度言う、生き残りたかったら攻めるんだ!! 今、このチャンスを逃したら、せっかく本体と勝手に分散してくれたあのエース級どもを叩き落せねえ!!」

「でも……」

「でももへったくれもねえ! セリーヌちゃん、今がその時なんだよ!!」


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